セルパン殿下は失敗する 3
「お待たせしました。我が君」
「お前か!」
この僕が一番信頼している男が来てくれた。
常に僕の近くに隠れていて、僕が呼んだり危険な目に合うと力を貸してくれる。
今回の作戦の要でもある例の惚れ薬を作るなど、どんな無理難題も難なくこなし、今となってはこの僕になくてはならない存在になってしまった。
今回はあの作戦のために少し離れていてもらったため、助けに来るのが少し遅れてしまったようだ。
この男が来てくれたのならば、百人力だ。
名前は……そういえば名前を聞いていない。
いつの間にか近くにいたし、名前を呼ばずとも「お前」とかで察してきてくれるからずっと聞いていなかった。
……まあ、名前を知らなくても今のところ困ってないし、僕の助けになるのなら名前など些細なことだな。
早速、僕の役に立ってもらおう。
「よし!お前が来てくれたのならもう安心だ!お前は僕のことを守れ!」
「御意」
「それでは外に向かうぞ!案内しろ!」
「御意。我が君、こちらへ」
全身黒ローブの男は、道案内をするために先導を始める。
道中の邪魔な瓦礫は男が何かしているのだろう。
一筋の煌めきが瓦礫に向かって飛んでいくと、瓦礫は粉々になって消えていった。
「よし!騎士団長にあの二匹を使って時間稼ぎをするように言っておいたし、お前がいれば確実に外に出られるな!」
あの男のいる安心感に、思わず口をついて出てしまう。
そのとき、僕の独り言を聞いていたのか、先導していた男は首だけこちらに向けてきた。
「…我が君。今言った言葉は本当のことですか?」
「ん?ああ、そうだが?」
「……もしかしたらマズイことになるかもしれません…」
男は何やら思うところがあるのか、少し困ったような声を出す。
「マズイ…?何がだ?」
僕はそれに疑問を感じ、思わず聞き返した。
「…今はとにかく急ぎましょう。いくら私でも、もし全方位が崩れれば守れる保証はありません」
「っ!そうだな!今は先を急ごう!」
何やら誤魔化されたような気がするが、今は仕方ない。
とにかく、早く安全なところに行くのが先だ。
それにしても、何がマズかったのだろうか?
あの二匹を使って時間稼ぎをする話をしたら反応していた気がするが……
とにかく、今は急いで逃げよう。