セルパン殿下は失敗する 2
「ちょうどいいところに来た!おい!あの二匹を連れてこい!」
「あの二匹…ですか?」
「そうだ!この前戯れに奴隷商人から買い取ったあの二匹だ!」
「え!?あ、あの二匹ですか!?それは…危険ではありませんか…?」
騎士団長が少し心配そうな声で僕に尋ねてくる。
「今はそんなことを言っている場合では__」
ドゴォッ!!
またどこかが崩落した。
しかも、先ほどと違い今度は音の発生した場所がここから結構近い。
破壊されたところがもうすぐそこまで近づいてきている。
「ぐっ…!今はそんなことを言っている場合ではない!死にたいのか!?」
「しょ、承知しました!」
ガシャガシャとアーマーの音を響かせながら慌てて走り去る騎士団長。
これであの二匹を魔王に当てれば時間稼ぎくらいは出来るはずだ。
幸い、今夜の作戦のために城の中には最低限の者しかいないはず。
作戦中は部屋の周囲に近づくなと言っておいたから、まだ犠牲者は出ていないだろう。
おそらく、この音と惨状を見てもう逃げているはずだ。
「今はとにかく外に出るしかない…!」
再び走り出す。
とにかく周りに何も無い広いところに出なくては、瓦礫の山に埋もれてしまう。
そのとき__
ドガァッ!ガラガラッ!
「っ!?うわぁっ!」
天井が崩れ、僕に向かって落ちてくる。
思わず両手を頭の上に構えて、落ちてくる天井から身を守ろうとする。
「__はっ!」
ガキィンッ!ドゴォッ!
一筋の煌めきが空を駆ける。
僕に落ちてこようとしていた天井の瓦礫は、全て一瞬の内に砕け散ってしまった。
そして、闇の中から一人姿を現す。
その人物は全身を黒ずくめのローブで覆っていて、その姿や表情をうかがい知ることはできない。
そして、その人物は僕の前に来ると、目の前で跪いた。