緑鬼の王、再び 59
「あ、アレとかどうですか?すごく美味しいです!」
イーリスがある店を指さす。
……ハンバーグですか。
悪くないですね。
「いえ、メアはこちらのほうがお好きですよね?」
ヴィサス様は別の店に手を差し向ける。
……なるほど、パスタですか。
ううむ、こっちも美味しそうですね。
どの店にするか悩んでいると、ふとある店が目についた。
「…あれ、このお店は……」
店の名前は【フォーゲル・ドライ】。
鳥の料理をメインにしていて、特に唐揚げが美味しいと聞く有名店だ。
私は興味を惹かれてお店の前に立つ。
言ってなかったが、私は大の唐揚げ好き。
前々から一回は食べてみたいと思っていたのだ。
「……あの、メア…ここのお店は…」
そのとき、ヴィサス様がちょっと気まずそうにしながら私に話しかけてきた。
「はい?ここのお店がどうかしましたか?」
「いえ…ここのお店はあの方の家が経営するお店ですから…」
「あの方とは?」
「その…この前の決闘のときに最後にメアに物申してきた方がおられたでしょう?その方です」
「……ああ、あのときの」
確か、イーリスとの決闘が終わった後に帰ろうとしたら話しかけてきた奴がいましたね。
話す内容が私の神経を逆撫でするようなものばかりだったので、盛大に皮肉って馬鹿にしてやったような気がします。
まあ、あまり覚えていませんが。
「別に大丈夫でしょう?あの方自身とお店には何の関係もないわけですし、私は唐揚げ食べたいです」
「そ、そうですか?メアが気にしないならいいのですが…そういえば、メアは唐揚げが好きなのですか?」
「そうですよ。衣がサクッとしてて、中身が肉厚でジューシーなものが特に好きです。ここのお店は唐揚げに力を入れていると聞きます。早速中に入りましょう」
私は唐揚げへの期待を抑えられず、さっさとお店の中に入る。
「ああ、待ってくださいメアリー様!」
「メアは唐揚げが好き…ちゃんと覚えておかないと…」
イーリスは慌てて私の後を追い、ヴィサス様は何かメモを取りながらお店の中に入った。