緑鬼の王、再び 54
「…まあ、イーリスが言いたいことは分かりました」
「そうですか?それは良かったです!あの女よりも役に立ちますので、これからもよろしくお願いします!」
「は、はぁ……」
あの女とは恐らくヴィサス様のことだろう。
事あるごとにいちいち対立するので面倒くさい。
「…まあ、いいです。それよりもレオン殿下に貴方が秘密を知ってしまった説明を__」
「_メア。どうかしましたか?」
「ヴィー?」
そのとき、ヴィサス様がレセプさんを引き連れて私に話しかけてきた。
すると、イーリスは何故か急に私の左腕に抱きついてきてこう言った。
「フフン!これからはアタシがメアリー様を支えていくんだから、アナタは引っ込んでてよね!」
「……はぁ?」
あ、これはマズイ。
ヴィサス様のこめかみに青筋が浮かんでいる。
それでも笑顔だけは崩さないところがむしろ恐怖を生んでいる。
それを知ってか知らずか、イーリスはまだ追撃する。
「もうアタシとメアリー様はとってもとっても大事な秘密を共有する、いわゆる運命共同体になったんだから。アナタはもうお払い箱ってことよ」
私の秘密を知っているのはイーリスだけではないのだが、それを知らないイーリスは左手をヒラヒラさせて勝ち誇った顔をする。
どうする?面倒だし振り払うか?
そう思っていたら、ヴィサス様が対抗するかのように空いている私の右腕に抱きついてきた。
「なっ!?何してんのよ!」
「それはこちらのセリフです!メアリーは私のものなんですからその手を離しなさい!」
いえ、私は私のものであって誰のものでもありません。
「アタシとメアリー様は運命共同体なんだから!アナタは邪魔なの!」
「勘違いしているようですが、メアの秘密を知っているのは貴方だけではないのですよ?その上で、私はメアのそばにいると決めたのです」
「はぁ?何それ!アタシだってメアリー様に何があっても絶対離れないし!」
「私はメアが何をしたとしても愛する覚悟があります!」
「何を!?」
「何ですか!?」
グイグイと両側から私の両手を引っ張る二人。
私の身体は、右へ左へと行ったり来たりする。
地味に痛い。




