緑鬼の王、再び 52
「お前たち人間がこの森で通る場所を教えろ。そこには近づかないように言っておく」
「あ、ありがとうございます…えっと、こことここと__」
プレシさんが地図を指差してキングゴブリンに教えていく。
というか、キングゴブリンが余りにも話を分かりすぎる。
人間に対する配慮がいきすぎていて、今までが一体何だったんだと思うほど。
ルナがキングゴブリンには戦いさえ与えとけば大丈夫みたいなこと言っていたけど、もしかしてキングゴブリンって本当は結構面倒見が良い?
とにかく、私がやれることはもうなさそうだ。
後はプレシさんにお任せするとしよう。
「プレシさん、細かいところはお任せしますね。これ以上私がいてもお邪魔でしょうし、あっちに行ってます」
「え、ちょっと待っ…!」
そう言って離れようとすると、まるで捨てられた子犬のような目で私を見てくるプレシさん。
私は再びニッコリと笑顔を向けると、サムズアップをした。
こういう頭を使うのは私苦手ですし、キングゴブリンのあの様子なら手荒なこともしないでしょう。
それなら、私は華麗に去るとします。
プレシさんの邪魔はしませんよ。
何故かプレシさんが、戦場で信じていた仲間に後ろから刺された時のような顔をしている。
心配しなくても邪魔しないから安心してほしい。
そんなプレシさんを置いて、私はヴィサス様たちの方に向かう。
なんかプレシさんがすがりつくような目をしていたような気がするが、きっと気のせいだろう。
「__メアリー様」
「え?イーリス?」
少し歩いたところで急に呼び止められる。
不思議に思って呼ばれた方向に振り返ると、そこに立っていたのはイーリスだった。
「大丈夫ですか?途中から姿が見えませんでしたけど」
「はい、アタシは少し離れたところにいたので大丈夫なんですけど……メアリー様………」
「?」
なんだか深刻そうな表情をしている。
もしかして、本当は何かあったのだろうか?
訳が分からず、首をかしげる私。
「メアリー様。やはりメアリー様の中に魔王がいるのですね?」
「っ!?」
え、何故バレた…?
まさか、さっきルナが出てきていた時に見られてた…?
いや、姿は同じなのだし、目を見られていなければ誤魔化せるはず。
まだいけるはずだ。