緑鬼の王、再び 46
「……まあいい。何か見えているんだろうが、それなら避けれないように撃てばいい話だ」
その瞬間、私の前後左右、さらに真上にまで魔力の揺らぎが出現する。
私は言葉にするより速く動き出した。
まず、一番魔力の揺らぎが濃い右側から拳が飛んでくると読み、集中する。
すると、読み通り右側からまず拳が飛んできた。
それを左手で受け流し、右手で下から腕の部分を殴りつける。
次に魔力の揺らぎが濃い左側。
そこからも同じように拳が突き出してくる。
それも同じように右手で受け流すと、次は上から肘を入れる。
二つの拳はすぐに引っ込むと、次は前後の魔力の揺らぎが同時に濃くなる。
そして、二つから同時に拳が飛んできた。
私はそれを回転しながら同時に受け止め、力を横に逃がす。
拳二つが左右にそれる。
私は、左右にそれた二つの拳に、上から拳を叩きつけた。
「ぐ…っ!うぅ…っ!」
少し離れたところからうめき声が聞こえてくる。
一発ごとに一撃やり返しているので多少は効いているのだろう。
そして、すぐに二つの拳は引っ込んで消えた。
その後、すぐに頭上の魔力の揺らぎがさらに濃くなる。
私はすぐに身を翻し、その瞬間に拳が魔力の揺らぎから落ちてきた。
しかし、私の姿はすでにそこになく、そのまま地面に突き刺さる。
そして、地面に突き刺さった拳に私は思いっきり蹴りを入れた。
「ぐわあぁっ!」
うめき声と共に慌てて魔力の揺らぎの中に引っ込む。
私は、ゆっくりキングゴブリンの方に向き直った。
すると、右腕をかばうキングゴブリンの姿があった。
「ぐぅっ!何故だ!何故我が攻撃する場所が分かる!?」
「何故?そんなの、見えるからですけど?」
「そ…そんな馬鹿な……」
キングゴブリンが信じられないものを見る目でこちらを見てくる。
失礼な。
「さて、そろそろ終わりにしますか」
私は、呆けている隙にキングゴブリンの懐に入る。
「なっ!しまっ__」
「日食……」
その瞬間、とてつもない轟音が響き渡った。
私を中心に地面に亀裂が全方位に広がっている。
「が…っ!馬鹿……な……」
そして、キングゴブリンは口から血を噴き出しながら自身の姿を確認する。
そして驚愕する。
そこに自身の姿はどこにも無かったからだ。
左腕は全て消滅。
左胸を中心に円形に空洞が広がっている。
首と右側の胴体がかろうじて繋がっている状態だ。
「……これでも手加減したんですよ?ルナが貴方を生きて目の前に引きずり出せと言うものですから」
「これで手加減……だと……?」
自身の肉体を完全に貫かれ、消滅させる体術など今までに見たことも聞いたこともない。
しかもこれで手加減など馬鹿げている。
そんなの、人間の力を完全に超えて__
「……そうか…お前はあいつの宿主だったな……そんな奴が普通の訳が無かった…という訳か…」
何かを納得したのか、そのまま崩れるように仰向けにキングゴブリンは倒れた。