緑鬼の王、再び 44
「__なに?」
「くっ!うぅ…っ!」
ギリギリ間に合った。
ヴィサス様たちの頭上に落ちてきた拳を何とか受け止める。
「うおぉぉっ!」
「な、何ですか一体!?」
急に頭上でドンパチやられて訳がわからなくなっているヴィサス様たち。
一応、足場兼、ヴィサス様たちに被害がいかないよう魔力の壁は作ってある。
しかし、魔力の壁もそろそろ限界だ。
受け止めるときの態勢も悪く、自身の力を上手く乗せる事ができない。
押し切られる。
「ぐっ!魔力の壁展開!」
受け止めるのは諦め、新たに自身とヴィサス様たち全員に、今の私の全力で魔力の壁を作り出す。
その瞬間、受け止めようとする力を失った落ちてくる拳は、そのまま私たちをバリスタごと叩き潰した。
ゴシャッ!ドゴォッ!
潰れた衝撃でバリスタは粉々になり、私たちも衝撃を殺しきれず吹き飛ばされてしまった。
「くうぅっ…!はっ!みんな無事ですか!?」
痛みに耐えながらなんとか立ち上がる。
「うう……なんとか……」
ヴィサス様は頭に手を当てながら身体を半分起き上がらせる。
どうやら無事みたいで良かった。
「良かった…他のお二人は……」
辺りを見回すと、少し離れたところに二人の倒れている姿が見えた。
「プレシさん!レセプさん!」
慌てて駆け寄る。
近寄ってみても動く気配がない。
抱き起こして息を確認してみると、かすかに息を感じた。
「良かった……二人共気絶してるだけみたいですね……」
なんとか、私の魔力の壁がみんなを守ってくれたようだ。
それにしても、さっきの攻撃は何だったんだろうか…
何もないところに拳を振り下ろしたと思ったら、ヴィサス様たちの頭上に拳が落ちてきた…
まるで、空間を超えて攻撃したみたいな……
そのとき、私の内側から何かが急激に浮上してくる感覚がする。
「貴様!何故その力を使える!それはあの娘の力だ!貴様ごときが使っていいものじゃないぞ!」
目が黒く染まり、激昂したルナが表に出てきた。
あまりの勢いに私が逆に内側に追いやられてしまう。
「ルナ!落ち着いて下さい!」
「落ち着いていられるか!奴は__」
「ルナっ!!」
「っ!」
私の張り上げた声にハッとするルナ。
昂っていた気持ちが徐々に下がっていく。
「……まだ戦いは終わっていません。そして、貴方は私に任せると言いました。違いますか?」
「………………」
少し、だが長い沈黙。
「……いいだろう、任せる。その代わり、奴を妾の前に引きずり出せ。よいな?」
「__はい」
「………うむ」
再び私の内側に引っ込んでいく。
代わりに私が表に浮上してくる。
目の色も白色に戻っていく。




