緑鬼の王、再び 43
「そうはいかないってね!くらえ!ホーリー・スフィア!」
そのとき、巨大ゴーレムの横から何発もの光弾が飛んできて、いくつか巨大ゴーレムに命中するとそこから激しく爆発した。
巨大ゴーレムは右腕や左足、左肩の一部などを失うと、魔法をくらった勢いでそのまま横に倒れていった。
「どうだ!こんなこともあろうかと隠れていたのだ!」
ドヤ顔で仁王立ちするイーリス。
イーリスには、保険として三人を守ってもらっていたのだ。
決して、イーリスが不器用すぎて他の人の魔力に合わせられなかった訳ではない。
そして、倒れた巨大ゴーレムが再び動き出そうとする。
あの巨大ゴーレムは、魔法を発動したときに作った赤色のコアを破壊しないと何度も再生してしまう厄介なものだ。
当然、まだコアを破壊していないので巨大ゴーレムは再生しようとしている。
「ん?なんか再生しようとしてない?くらえ!ホーリー・スフィア!」
イーリスは途中で巨大ゴーレムの異変に気づき、ホーリー・スフィアを追加で放つ。
手足が再生しきっていない巨大ゴーレムは、為すすべもなくホーリー・スフィアをくらう。
そして、何発かくらったところで、巨大ゴーレムは再生するのを止めた。
「あれ?終わった?」
イーリスは、急に動かなくなった巨大ゴーレムをまじまじと覗き込む。
どうやら、たまたまコアにホーリー・スフィアが命中したらしい。
なんて運がいい女なんだろう。
そして、巨大ゴーレムが砂になって消えていくのを確認すると、イーリスはこちらに向かって大きく手を振る。
「ゴーレム討伐完了!」
ものすごくいい笑顔にピースサインを送ってくる。
なんか見てて少々思うところはあるが、これはあとでご褒美案件だろう。
そう考えると、この後が少し憂鬱だ。
まあそれはそれとして、これでバリスタを妨害することは出来なくなった。
後はキングゴブリンを仕留めるだけのはずなんだが……
なんだか嫌な予感がする。
ここまで順調に行き過ぎているような…
「これで憂いはなくなりました!くらいなさい!合体魔法__」
そう、まるで誘導されているみたいな__
そのとき、チラッとキングゴブリンの方を見てみる。
すると、キングゴブリンの口元が少しだけニヤついた。
「っ!?まさか!」
バッ!とヴィサス様たちの方を向く。
すると、ヴィサス様たちの頭上に魔力の揺らぎのようなものを発見した。
「ハハハ、実に愚かだな。すぐに勝った気になり慢心する。それがお前たちの絶望になるとも知らずに……」
キングゴブリンが右腕を振りかぶる。
まさかあの魔力の揺らぎと関係あるのか_いや、ないはずない!
私は魔力を全開放する。
自身の身体はすでにボロボロだし、魔力を全開放したおかげでさらに悲鳴を上げているが、知ったことか!
今はとにかく、みんなを守る!
とにかく全力でヴィサス様たちの頭上の魔力の揺らぎに向かって突進する。
「__これがお前たちの絶望だ」
そのとき、キングゴブリンは右腕を振り下ろした。