緑鬼の王、再び 10
「……ゴブリンオーガが出てくるからって、いったい何になるというんですか…」
私は100Gのショックが強すぎて、いまだに立ち直れずにいる。
思わず、卑屈になってしまうほどだ。
「メアリー様お忘れですか!?冒険者組合でサインした契約書の注意事項を思い出してください!」
「……注意事項?」
確か、いろいろ書いてあったような…
その中には__
「__依頼を遂行している最中に突発的に出会った魔物は、討伐すれば冒険者組合が買取る!」
普通なら、自身の冒険者ランクに見合った依頼しか受けられないため、そこで出る魔物の強さも冒険者ランクに合わせたものしか出会わないよう冒険者組合も依頼を精査している。
が、ときおりどうしても冒険者組合の調査から漏れて、受けた依頼のランクよりも高ランクの魔物とエンカウントすることがある。
その場合、当然逃げることが推奨されているが、もし討伐できれば冒険者組合から魔物のランクに合った特別報酬が貰える。
それも、一匹ごとに。
「それを早く言いなさい!えっと…一匹、二匹、三匹__」
目の前に現れたのは全部で五匹。
「イーリス!これでいくらになりますか!」
「はい!ゴブリンオーガはCランクなので、キレイな状態で一匹20万Gです!」
「20万…!」
これはなにがなんでもヤるしかありません…!
「よし!それでは早速__」
「待ちなさいイーリス」
「_え?メアリー様?」
ゴブリンオーガを倒そうと前に出るイーリスを、手で制して止める。
「ここは私にやらせてください」
「え?でも、メアリー様だけにさせる訳には_」
「私に譲りなさい、と言っているんです」
さっきから散々草むしりをさせられてイライラしてましたから、お金を稼ぐついでにこのイライラを発散させてもらうとしましょう。
これは何人にも邪魔させはしません。
私は、ゆっくりとゴブリンオーガに向かって歩き出す。
「め、メアリー様_」
ガシッ。
イーリスが追いかけようとするが、それをヴィサス様が肩を掴んで止める。
「今のメアを見なさい。アレを止めようものなら、貴方がミンチになりますよ」
「え、そんなまさか_」
ヴィサス様に言われて、改めて前を見るイーリス。
すると、私の周りだけがまるで音がくり抜かれたかのようにシーンと、異様な静寂に包まれていた。
「__ヒッ!」
あまりの異質な静けさにそのまま見続けていると、イーリスの目に一瞬だけ修羅の姿が浮かび上がった。
思わず悲鳴を上げて目を逸らしてしまう。




