私に付きまとわないでください 3
ゴソゴソ…ゴソゴソ…
「…何をしていますの?」
「え?ちょっと手袋とかなかったかな、と思いまして…」
スカートのポケットを探って手袋を探すが見つからない。
今日は持ってなかったかな?
「…何故、そのようなことを?」
「いえ、決闘を申し込もうと思いまして。手袋を投げつけるのが決闘の申し込み方法だったかと」
うーん、見つからない。
今日は持ってなかったみたいです。
「…決闘?何故決闘なんか…」
「いえ、あなた方は話し合いはしないと言われました。なので、殴り合いで決着をつけようかと。手袋は見つからないですし、もう面倒なので今ここで決着つけません?」
そう言って胸の前で両手を握って構えると、シュッ、シュッと左手の握り拳を前に出してパンチする真似をする。
「いや…えっと、その…」
「まずは貴方からいきますか?スィー様」
「え?いや、その…」
「もう面倒なので三人まとめて掛かってきてもいいですよ。全員、死なない程度にぶっ飛ばしてあげます」
そう言って、私は三人の顔を順番に見る。
なんだか、少し怯えた表情をしているように見えるのはきっと気の所為だろう。うん。
「あ、えっと…」
「わ、私は…」
「…どうしたのですか?あ、先手は譲ってくれるということですね。そういうことならお言葉に甘えて__」
「お待ちなさい」
私は空気が読めるので、3対1だから先手を譲ってあげるという雰囲気を敏感に察知し、それならとこちらからいこうとしたら三人のさらに後ろから凛とした声が響いた。
動きを止め、声がした方に目を向けると、先ほどまで表情を隠していた扇子を閉じ、三人の令嬢を手で制して一歩二歩と前に出てきた。
三人の令嬢を後ろに控えさせ、前に出てくるその姿は、まるで三人を守るために出てきたみたいだ。
何故?
「あ、もしかして三人より先にお相手してくださるのですか?ヴィサス・カサンドラ公爵令嬢」
背中くらいまである綺麗な淡黄蘗色の髪を三つ編みのハーフアップでまとめ、同じく淡黄蘗色の大きな瞳に左右対称に整った美しい顔。
身長は私と同じくらいなのか目線がほぼ一緒。
しっかりと制服を押し上げる二つの膨らみに、キュッと引き締まった腰。
スタイルの良さを際立たせる細長い足。
所作一つ一つが美しく、気品を漂わせる雰囲気が誰よりもお嬢様という言葉が似合うと思う。