白黒ハッキリつけましょう 22
「……お待ち下さい!メアリー様!」
イーリスを抱えたまま出口に向かおうとすると、名も知らない女生徒から呼び止められた。
「…なんでしょう?私は急いでいるのですが__」
「その方は止めたほうがいいと思います。そんな元平民を受け入れては、メアリー様の品位が落ちてしまいます」
私の言葉に重ねるように話す女生徒。
思わず、こめかみに青筋が浮かび上がりそうになる。
…おっと、いけませんいけません。
一旦落ち着きましょう。
大きく息を吸って、吐いて、深呼吸をする。
「はぁ、ふぅ……で、私の品位が落ちる?何を根拠にそんなことを?」
「あの方の立ち居振る舞いをメアリー様もご覧になったでしょう?あんな粗暴者がメアリー様のお側にいると、メアリー様まで悪く言われてしまいます」
「そ、そうです…!私もそう思います!」
「どうかお考え直しください!」
周りの女生徒たちも、最初に私に抗議してきた女生徒に同調していっしょになって抗議してくる。
「……………………フフッ…フフフッ……」
「…め、メアリー様…?」
私の様子がおかしいことに気づいたのか、訝しげな表情でこちらの様子をうかがう女生徒たち。
「フフフッ…アーハッハッハッハッハッハッハッハッ!」
そんな中、私は我慢できずイーリスを抱えたまま思い切り笑いだしてしまった。
「…め、メアリー嬢が笑っている姿、初めて見た…」
「ああ…しかもあんなに高笑いされて…」
私の突然の変化、それも初めて見る私の笑う姿に、周りの生徒たちも呆気に取られている。
「メアリー様、ど、どうされたのですか…?」
「いや…あまりにもおかしなことを言うものですから…我慢できなくて…」
「え…?おかしい…?」
私を心配してか、最初に抗議してきた女生徒が不安そうな表情で私に声をかける。
しかし、それに対して返した私の言葉の意味がわかったのだろう。
最初は疑問に満ちた表情だったが、みるみる内に顔を強張らせていく。
「め、メアリー様!失礼ですよ!私はメアリー様の事を思って__」
「これ以上笑わせないでください」
さっきの意趣返しとばかりに、女生徒の言葉に重ねる私。
先ほどとは一変して、一瞬で重苦しい雰囲気になる。
私は、女生徒たちに向かって鋭い視線を向けた。
「私のことを思って……よく言いますね。今の今まで私のことを無色の公爵令嬢だと蔑んでいたのに」
「そ、それは…」
女生徒は、言葉を詰まらせる。
ビクッ!
腕の中にいるイーリスも、私の言葉に反応してわずかに震える。
何か、心当たりがあるのだろう。




