白黒ハッキリつけましょう 21
「迷惑?貴方程度が起こすことなど、私には些末なことです。それとも、貴方がいるぐらいで私がどうにかなるほど、頼りない女に見えますか?」
「い、いえ!滅相もございません!」
私の言葉に、イーリスは座り込んだまま背筋をピンッと伸ばす。
「ならばよろしい。これより、貴方は私のメイドです。ほら、いつまで座っているんです?」
「あわわ!すみません!」
私は、座り込んだままのイーリスに手を差し伸べる。
そして、イーリスの両手を掴むと、そのまま引き上げて立たせた。
顔はグチャグチャのまま、足はプルプルと震えている。
「いつまで泣いているんです?私のメイドともあろうものが、いつまでも泣いていてはカッコ悪いでしょう?」
「はい!すみません!…ズビーッ!」
「あ…フフッ、もう何をしてるんだか…」
いつまでも泣いているので私はハンカチを取り出し、イーリスの目元を拭ってあげる。
すると、イーリスは思いきり鼻をすすった。
鼻水まで勢いよく吸い込む。
その貴族らしからぬ行為に少々呆れてしまうが、その後泣かないように一生懸命顔を強張らせているのを見ると、なんだか憎めなくなってしまう。
…さっきまでは決闘までしてた間柄でしたけど、こうしてみるとまるで妹が出来たみたいでなんだか可愛いですね……
至らないところは多々あるが、それがかえって可愛らしいという、なんとも奇妙な感覚。
なんとなく守ってあげたくなるような、そんな感じだ。
……もしかして、これが母性というやつですか?
まあ、私子供なんていないんですけど。
「くうぅぅぅぅっ!メアに涙を拭ってもらえるなんて…っ!なんて羨ましいぃぃぃぃっ!」
「まあまあ……」
そんな中、ハンカチを口にくわえ、血の涙を流さん勢いで悔しがっている人が一人いた。
「……な、なあ、これってどうなんだ?」
「いや、どうって言われてもなぁ……」
そのとき、私とイーリスのやり取りを見て思うところがあったのか、そんな声が聞こえてくる。
「さて、決闘も終わったことですし、帰りましょうか。貴方のメイド服も新調しないといけませんしね」
「え?あ、メアリー様!?」
当然、私はそんな声を無視し、イーリスをお姫様抱っこで抱えると、削れてしまった地面をジャンプして飛び越え、そのまま早々に帰ろうとする。
「め、メアリー様!じ、自分の足で歩けます!」
「何を言っているんですか。あんなに魔法を撃って、その上大技まで使ったんです。もう魔力がなくて歩くのも辛いのでしょう?今は大人しく抱かれていなさい」
「は、はいぃぃぃぃ…………」
何故だろうか。
私がそう言うと、イーリスは顔を赤くして俯いてしまった。
「○す○す○す○す○す○す○す○す___」
「……ヴィサス嬢……」
そして、それを見たある人は、もはや呪詛を吐くだけの憐れな存在へと成り果てていた。