白黒ハッキリつけましょう 4
「メアリー様ー?」
「……イーリス様?」
扉をノックしたのは、声からしてイーリスのようです。
最近あれだけヴィサス様に邪魔されているせいか、ついに寮の私室にまで来るようになってしまいましたか。
はっきり言ってストー…………
いえ、なんでもありません。
…ん?心のなかではイーリスに様はつけないのかって?
そんなの、尊敬できる人にしかつけませんよ。
まあ、私はこう見えても公爵令嬢なので、実際に呼ぶときは上品な貴族よろしく、敬称をつけますが。
シルト?知りませんね。
「メアリー様?いないのかな?」
おっと、考え事をしていて放置してしまいました。
とりあえず、扉を開ける。
「あ、メアリー様。よかった」
「イーリス様。どうされました?」
「いえ…あの……」
…ん?どうされたのでしょう?
目線をそらして急にもじもじと…あ、もしかして__
「トイレは我慢すると良くないらしいですよ?あ、私の部屋のトイレを貸しましょうか?」
「ち、違う!そんなんじゃない!」
顔を真っ赤にして否定するイーリス。
あら、違うんですか?
まあ、私的にはどちらでもいいんですけど。
そんな事を思っていると、イーリスは何かを決意するかのように深呼吸し、真剣な表情になる。
「し、勝負よ!メアリー・フェリシテ!」
そう言って、おもむろにポケットに手を突っ込んだかと思うと、そこから取り出したものを私に投げつけてきた。
それは、私のお腹にペシッ、と当たって地面に落ちる。
「…………手袋?」
地面に落ちたものをよく見ると、それは白い手袋だった。
「この世界では、手袋を投げつけたら決闘を申し込んだことになるはず!そして、申し込まれた方は断れない!そうでしょ!?」
確かに、そうですね。
昔は、互いの主張が衝突してどちらも引かないときによく決闘をしたとか。
ということは、イーリスも私に何か主張したいことでもあるのでしょうか?
まあ、私も最近付け回されていてウンザリしていたので、ちょうどいいと言えばちょうどいいですね。
私は地面の手袋を拾い上げる。
「いいでしょう、その勝負受けて立ちます。はい、これまだ使えますよ」
そう言って、落ちていた手袋をイーリスに返す。
「え、あ、どうも……って、いいの?」
「いいもなにも、手袋を投げられた時点で断れないでしょう?」
「いや、そうなんだけど……あれ、もっとゴネられるかと思ってた……」
「え?今なんて?」
最後の方はボソボソ言ってて、なんてしゃべってるか聞こえなかった。