宵闇 ―だから、もう少しだけ―
1ヶ月半ぶりの更新です! 待っていてくださった方、申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございました。
「遅い」
「……ごめんなさい」
広いお屋敷を来たときと同じように戻り、やっとたどり着いた玄関。そこでは、刺々しいオーラを纏ったシルバさんが仁王立ちになっていた。
「まぁいいじゃないですか、これから2人で帰るのに険悪な雰囲気を作ってどうするんです」
レザンが助け舟を出してくれたが、シルバはむすっとしたままで「帰るぞ」とだけ言って私を引きずっていった。
「あまり遅くならないようにって言ったよな?」
「はい……」
「なんで俺がそう言ったのか分かるか?」
「前に、迷子になったから?」
「それもある。けど、一番大事なのはそこじゃねえ」
彼の言う意味がよく分からず、私はただ首をかしげた。
「もう少し、自分の立場を考えてくれ。もし、お前に何かあったら……」
そこから先は、よく聞こえなかった。私の顔は、シルバの胸に完全に埋まっていた。
抱きしめるなんて暖かいものではなくて、まるで締め付けるような力。
でも、息苦しいのは鼻と口を塞がれているせいだけじゃない。
何かに怯えてしがみつくような、切迫した気配。
それに絡め取られると、身動きが出来なくなる。
あまりに暗く淀んでいて、息をするのさえ許されないような気分になる。
それから、どのくらいの時間が経っただろう。
「シルバ……?」
「! 悪い……」
シルバは、バツが悪そうに私を引き剥がした。
日光の残りが完全に消えようとしている薄暗い中では、細かい表情までは見えない。
もしかしたら、私が読み取るべき情報を発してくれているのかもしれない。
それでも、私は。
「帰ったら――聴かせたいものがあるの」
もう少しだけ、あなたに甘えたいと願ってしまう。
我儘だって分かっている。
でも、シルバが不安に思うのと同じように、
私も不安に思うことがあるんだよ。
この世界で確証があるものなんて、私にとっては無いに等しいのだから。
あなたの言う立場も、
私の価値も、
存在そのものさえも、
それが本物である証明は、誰にも出来ない。
信じていたくても、どうしても不安になってしまうときもある。
だから、もう少しだけ 。