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群青の国のアリス  作者: ラナ
第五章   姫を解くのは
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宵闇  ―だから、もう少しだけ―

1ヶ月半ぶりの更新です! 待っていてくださった方、申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございました。

「遅い」

「……ごめんなさい」


 広いお屋敷を来たときと同じように戻り、やっとたどり着いた玄関。そこでは、刺々しいオーラを纏ったシルバさんが仁王立ちになっていた。


「まぁいいじゃないですか、これから2人で帰るのに険悪な雰囲気を作ってどうするんです」

 レザンが助け舟を出してくれたが、シルバはむすっとしたままで「帰るぞ」とだけ言って私を引きずっていった。






「あまり遅くならないようにって言ったよな?」

「はい……」

「なんで俺がそう言ったのか分かるか?」

「前に、迷子になったから?」

「それもある。けど、一番大事なのはそこじゃねえ」

 彼の言う意味がよく分からず、私はただ首をかしげた。





「もう少し、自分の立場を考えてくれ。もし、お前に何かあったら……」






 そこから先は、よく聞こえなかった。私の顔は、シルバの胸に完全に(うず)まっていた。


 抱きしめるなんて暖かいものではなくて、まるで締め付けるような力。


 でも、息苦しいのは鼻と口を塞がれているせいだけじゃない。


 何かに怯えてしがみつくような、切迫した気配。


 それに絡め取られると、身動きが出来なくなる。


 あまりに暗く淀んでいて、息をするのさえ許されないような気分になる。
















 それから、どのくらいの時間が経っただろう。


「シルバ……?」

「! 悪い……」

 シルバは、バツが悪そうに私を引き剥がした。

 日光の残りが完全に消えようとしている薄暗い中では、細かい表情までは見えない。

 もしかしたら、私が読み取るべき情報を発してくれているのかもしれない。

 それでも、私は。










「帰ったら――聴かせたいものがあるの」











 もう少しだけ、あなたに甘えたいと願ってしまう。


 我儘だって分かっている。


 でも、シルバ(あなた)が不安に思うのと同じように、


 私も不安に思うことがあるんだよ。
















 この世界で確証があるものなんて、私にとっては無いに等しいのだから。















 あなたの言う立場も、


 私の価値も、


 存在そのものさえも、


 それが本物である証明は、誰にも出来ない。


 信じていたくても、どうしても不安になってしまうときもある。





 だから、もう少しだけ       。

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