分かってるなら ―所詮、そういう関係だから―
「てゆーかありす、お城戻んなくていいの? 黒うさぎが待ってるんじゃない?」
「なんで?」
「なんでって……ずいぶんな言い方だね」
「その小馬鹿にしたような言い方もどうかと思うわ……!」
「まぁ、それはいいじゃん」
色々引っかかるけど、とりあえずスルーしよう。
「星祭り、あいつと行くんじゃないの? ちゃんと約束した?」
「あー……なんていうか、さ、誘えなかったんだよね……」
うわ、ロストの白い視線がものすごく痛い!
「私なりに頑張ったんだよ!」
「ありすが誘うというより、そこは黒うさぎが誘うところなんじゃ……」
「え、そうなの?」
「だって、基本誘うのは男の見せ場ってもんじゃん?」
「……そうなの……?」
「そんな疑いの目で見ちゃいやん!」
本当、食えないキャラだな……!
「ほら、“時計兎”は“アリス”が大好きだからさ」
「え?」
なんだろう、この感じ。
“時計兎”
は
“アリス”
が
大好き
「……っ」
「だから、早く戻ったほうがいいと思うよ?」
そうだ。あの人も同じことを言っていた。
私から大事な人を奪った、憎い憎いあの人――――
『あなたと私は“ふたり”でひとつ。
あなたを傷つけるかもしれない男になんか、渡さないわ』
「ありす?」
「ごめん、なんでもない」
「あは、あいつは意気地なしだから、もうありすが頑張るしかないかもね」
「うん、頑張る……」
聞いてから後悔したって、遅いんだ。
*・*・*・*・*
お城に戻ると、1つの部屋から話し声が聞こえた。
入ったことのない部屋だけど、聞こえる声は聞きなれたもの。
シルバとジーナだ。
『こっちの方が似合うと思うけど……』
『私はこの色の方が好きだが』
『……じゃあそっちにするか』
『それにしたいんじゃなかったのか?』
『いや、ジーナの意見を聞くのが一番だと思ったから』
開けようとドアノブにかけた手は、動かないまま。
ロスト。
あなたって本当、何者なんだろう?
まるで、エスパーみたい。
だけどあなたは、私を突き落とすばっかりだね。