似てる ―その瞳が見るものは―
私が外に出ると、ティオたちはいなかった。もう帰ってしまったのかもしれない。
まだ部屋に帰る気にはならない。あんなに暑かったのに、今は特に何も感じない。
「……お散歩でも、しようかな」
ここで立っていても仕方ない。私はゆっくり歩き始めようとして、立ち止まった。
見覚えのある銀髪。隣には、金髪のグラマラスな女性。
「きゃははっ! もー、ロストったらぁ」
なんだ、あの女。猫なで声が、何とはなしに気に障る。
たぶん、彼女じゃない。ロストのことが好きというより、ただ気に入られたいだけなのが見え透いている。
だけど、似てる。
自信なんてかけらもなくて、
「いらない子」になりたくなくて、
出来るだけ相手に気に入られるように動いていた、
私に。
「あれ、ありす?」
「ちょっと、ロスト!?」
ぼやっとしていたら、いつの間にか目の前に銀髪が迫ってきていた。
お姉さんが怒っていってしまったけれど、いいんだろうか。
「何してんの?」
「ん、お散歩」
「風流だねえ」
……風流か?
「ロストこそ、何してるの」
「さあね」
「ちょ、不公平……!」
ふふんと笑う顔も、妙に様になる。
シルバやレザンをはじめ、この国の人たちはみんな超がつくほどの美形だけど、ロストの美形には独特のオーラがある。
言ってみれば、人形のような美しさ。
いつでも乾いた笑いを浮かべて、いつでも冷たく蒼ざめて。
そう、それはまるで蝋人形。
「何考えてんの」
ほら、またそうやって笑う。
きっと彼も、私やあのお姉さんと一緒。
心だけ違うところをさまよってるんだ。
自信家に見えるけれど、中身は違う。
自分でも自信が持てない自分を受け入れてもらうため――――
だ れ に … … ?
群青の国のアリス、今回でちょうど20話目となりました。まだまだ続きますが、これからもよろしくお願いします!