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群青の国のアリス  作者: ラナ
第四章   姫を陥すのは
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昔々のおとぎ話 ―“アリス”の帰り道―

「くしゅんっ」

 メイベルが小さくくしゃみをした。心なしか顔が白い、ような気がする。

「一回出ようか?」

「はいです……」

 太陽は相変わらずぎらぎらと照りつけている。少し経てばすぐに身体も温まるだろう。


「まだだめですか?」

「もうちょっと。ずっと入ってると冷えちゃうからね」

「ひまですぅ……」

「……確かに」

「何かしてくださいです」

「え、何その無茶振り」

「お話とか!」

「お話、ねぇ……」

僕とメイベルの実年齢は一つしか違わないのだが、何故か精神年齢はメイベルの方が圧倒的に低い。しょっちゅう十二才とは思えないような発言が飛び出してくる。

 まぁ、僕も精神年齢が高いほうだから余計差が開くのだとレザンには言われるけど。

 

 そんなわけでメイベルに「お話」をせがまれることは珍しくもなんともないのだが、生憎本も何もなしに語れるようないわゆる持ちネタというやつは大してない。

 話らしい話といえば……ちょっとシュールだけど、まあいいか。






 *・*・*・*・*





 昔々。



 群青の国に、お互い瓜二つのそれは可愛らしい姉妹がいました。



 姉は賢く、幼いながらもみんなから信頼されていました。



 妹は優しく無邪気で、みんなから愛されていました。


 

 二人は仲がよく、いつでも一緒にいました。



 


 しかし、平和な日々は唐突に終わるもの。



 ある日、姉妹は蝋人形館の主(グリフォン)に捕らわれてしまいました。



 姉は怯える妹と寄り添って、逃げ出す方法を考えました。 



 グリフォンは二人をすぐに閉じ込めはせず、美しいまま(にんぎょう)にしておくための薬を調合していました。



 幸いグリフォンは老人で耳が遠かったので、二人は気づかれないうちに抜け出し、全力で走りました。



 問題は、そこからでした。



 グリフォンは執念深く目をつけた獲物は逃がさないという噂でした。



 追われたら、国中どこにいてもいつかは捕まってしまいます。



 二人は考え、とても危険な計画を思いつきました。





 「《“アリス”の帰り道》を使って、向こうの世界に行けばいい」





 “アリス”の帰り道とは国境の森の奥にある泉のことです。



 そこに飛び込めば、“アリス”が元いた世界へ行けると言われていました。



 しかし、この泉は一方通行です。



 飛び込んでしまえば、もうこの世界へは戻ってくることは出来ないに等しいことでした。



 それでも姉妹は自分の命を守るため、泉に飛び込んだのでした。





     *・*・*・*・*





「おしまい。そろそろあったまったかな?」

「……」

 なんだかメイベルがぷるぷる震えている。

「あれ、寒い?」

「怖かったです……」

 ああ、終わり方が後味悪いからちょっときつかったか。

「ごめんごめん。大丈夫だよ、昔のおとぎ話だもん」

 実際は大して昔でもないしおとぎ話でもないのだけど、それは伏せておこう。

「でも……」

「じゃあ、もしメイベルがさらわれそうになったら僕が守ってあげる」

 それなら怖くないでしょ? と付け足す。

「……はい、です」

「よし、いい子。もう一回川、入る?」

「今日はもういいです」

「そっか。じゃあ、帰ろう」

 立ち上がって歩き出そうとすると、メイベルが手を掴んできた。

 やっぱり不安らしい。


 僕はその手をそっと握り返した。

 夏休みだというのにだいぶ久しぶりの更新です。待っていてくださった方すみません、そしてありがとうございます!



 そういえば、そのうちキャラ人気投票なるものをやってみたいと思っています。いつになるかはわかりませんが、早くとも猫と帽子屋のターンが終わってからですね(笑。アリスパロを書いたらやってみたかったんです・ω・



 ご意見ご感想お待ちしております^^

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