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群青の国のアリス  作者: ラナ
第三章   姫を庇うのは
12/36

日本語なんだ…… ―便利システム―

「……で、なんだ?」

「お仕事をいただきに参りましたですよ」

「なんでだ」

「暇だから?」

 シルバが盛大にため息をつく。


「で、何をやると?」

「超重度の力仕事以外なら何でも」

「ほぉ。じゃ、これの校正頼む」

「校正?」

 ほら、と渡された書類には細かい文字で書かれた文章。

「日本語なんだ……」

「なんだ、日本語って」

「私の母国語」

「あ、そういうことか。ま、お前“アリス”だしな」

「それ、なんか関係ある?」

「“アリス”は誰でもこの世界の文字が読めんだよ。この世界に来たときから。上手いこと知ってる言語に変換されるらしい」

 じゃあもともとこの文書はここの言葉で書かれていて、それを私の脳が都合よく日本語にしてくれてるわけか。便利なシステムだこと。


「で、これの誤字を直せばいいわけね?」

「おうよ」

「わかった」

 私はそのままシルバの部屋の椅子を借り、校正を始めた。

「いやいやいや、ちょっと待てお前!」

「何よ、仕事してるのに」

「ここでやるなよ!」

「え、なんで?」

「なんでって、そりゃ……」

 シルバはそこで言葉を濁した。

「もごもごしててわかんないんだけど」

「……もういい。なんでもねえ」

 だったら最初から言うなよ、と思った私は狭い心の持ち主ですか?

「つーか、この状況で何も気づかないお前がすげえよ……」

「逆にどこに何か気づくべき要素があるっていうのよ」

「……いっぺん川で流れてくるか?」

「ヤダ」

 ぶつぶつと会話しながら私たちはお互いの作業を進めていく。






   ……三時間後。






「終わった……」

 間違いと思しき部分をいちいちシルバに聞きつつ直すのは色んな意味で疲れる作業だった。そして誤字脱字が多すぎるぜ、うさぎさんよ。

「ん、ご苦労。じゃ、女王様の所にそれ持ってってくんねえか」

「りょーかいです、大佐」

 書類を持って部屋を出る。


 しばらく歩いて、ふと背後から視線を感じた。振り返ってみたけど、誰もいない。


「気のせい?」

「あら、何が?」

 こんな可愛らしい声の人物は私の知る限り一人しかいない。

「……女王様」


「ありす、クロードには会えたの?」

「まぁ、おかげさまで……」

「よかったわ。ところで、その紙の束はなあに?」

「シルバから女王様へってことで、預かってきました」

「まぁ、ありがとう。最近仕事いっぱい頼んじゃったからもっと遅くなるかと思ってたけど、心配なかったわね。……そうだ、これから暇?」

「はい? まぁ、暇です」 

 やる事とか、ないんだもの。

「じゃあ、お庭でお茶会の続きしましょ? 待ってるから、シルバに断っていらっしゃいね」

「シルバに?」

「そう。送り出したままありすが戻ってこなかったらきっと心配するわ」

 どう頑張ってもお城の中ですけど……とは言えず、とりあえずシルバの部屋に戻ることにした。

 楽しそうにスキップで去っていく可愛い女王様を見送って、元来た道を戻ろうと後ろに向き直る。


 向き直った目の前に、人影。








      「どうも、初めまして」








 白銀の髪に真紅の瞳、おとぎ話の王子様もびっくりの整った顔立ち。


 それから、シルバとは正反対の真っ白なうさぎの耳。




     「私は“時計兎”です。お待ちしていましたよ、“アリス”」






















   “時計兎”? 




    この人が?




    どういうこと……?















「おや、少し説明を飛ばしすぎましたかね。まあいいでしょう、じきに分かりますから。今はあなたに来ていただくことが先決です」


「来て、いただく……?」


「ええ。




 我らがバーミリオン様の治める、銀朱の国へ」






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