第一部 ぼっちポチ ⑨ ポチ、改めて自己紹介する
お互いの肩にお互いの顎をのせ、ほっぺをウリウリとくっ付け合った
陽葵! なんて優しく賢い子なのだろう!!
私たちの関係性を一番“自由”な立ち位置にしてくれた。
『陽葵は私の恋人』
『私は陽葵の恋人』
ふたりが……
おのおのの心に存在し続けている“人”になるだけ抵触せずに、お互いがお互いを大切に想う事ができる。
だから……
こうしてほっぺをくっつけ合うのも
“いちゃいちゃ”なのだ。
キスするのも……
恋しいから
“恋”だから……
いつか醒めたとしても……
そう、
陽葵が自分の足できちんと立てて
お別れの時が来ても
恋人だったのなら
思う存分泣いて、祝福できる。
「ね! ウチ来て! 今週もパパは出張だから」
恋人の甘い誘いに私は色々と逡巡したが、なんとかオトナとしての節度で押し留まった。
「陽葵! それはいけない。私はあなたの恋人だけど、お父様にとっては赤の他人だから。保護者の同意なく家に立ち入る事はできないわ」
陽葵はほんのわずか、ごく一瞬だけ、とても残念そうな表情を浮かべたが、ガラリとそれを打ち消して「プッ!ククク」と笑った。
「恋人はパパから憎まれるものなのね」
「そうよ~ だから“娘さんを下さい”ってなかなか言えないものなのよ」
「ふふふ、私は、言って欲しいなあ」
「そうねえ 大人になったらね」
私がこう応えると……
陽葵は私を熱く見つめた。
「そんなに……待てない」
ああ、なんて!!……
私はそこに……ガランとした中に孤独がいっぱい詰まったお洒落なだけの家に独り取り残されている陽葵の様を見た。
言えるなら言ってあげたい。
「お嬢さんを下さい」と
けれども私には
その力も
資格も無い。
でも私は私の力の及ぶ限り、できる限り、カノジョを守ってあげようと、いっぱい愛情を注いであげようと思う。
そう、犬のポチくらいには
なれるよね。
「ね!陽葵!」
「なに?お姉さん?」
「オバサンにはポチの他にも名前があるの」
「オバサンじゃないもん! 世界一恋しいお姉さんだもん」
そう言われて私はまたウルッとする。
「アリガト 私の名前はね、柏木伊麻利。漢字はね、かしわの木に伊豆の伊、麻の麻、利用の利。分かる?」
「うん、木に白でしょ?」
「そうそう」
「お姉さん、いまりさんって言うんだ。あはっ! 私、似てる、ほら、私、ひまりだもん」
「ホントだね、ひらがなだと一字違い」
「でも……いま姉さんって少し呼びづらいから……あの、『マーねーちゃん』って呼んでいい?」
私は何となく
カノジョが私をそう呼びたくなったのが分かった。
「うん、いいよ。『マーねーちゃん』で」
陽葵は返事の代わりに子供らしい仕草で首に抱きついて来たので、おでこ同士をクリクリして、ちょっとキスした。
それから、お互いにお互いの温かさが残るようにしっかり抱き合って、手を繋いでカノジョを家まで送っていった。
とても離れがたかった。
「また明日も会えるから、ね!」
陽葵と自分に言い聞かせながら、繋いだ手の指を一本ずつ離した。
陽葵がドアを開け、こちらに手を振ってパタンと閉めても
私は少し離れて様子を見ていた。
家のあちこちに
灯が点くのを確かめるまで……
。。。。。。。
イラストです。
陽葵ちゃんのラフ画をAIで彩色しました。
くちびるがきれい(*^。^*)
偉いぞ!AI(*^^)v
あと、切ない目の色
少し出せたかしら…




