第二部 不都合な子供たち ⑤ 摘蕾
今回は“伊麻利さん <マーちゃん>”視点です。
“グループワークノート”に書かれた一行一行が私を突き刺す。
『摘蕾』という言葉が……私を容赦なく奈落へ突き落す。
椅子の上でぐったりと弱っている陽葵が、目の前に居るというのに……私の想いや視線は……自分が殺めてしまった“ベビたん”へ向いてしまっている。
本当に私はダメで自分勝手だ。
陽葵を守りたくて読み始めたこの『遺書』に、私自身が砕け、震えて、挙句の果てには……弱っている陽葵に介抱されている。
“彼方”へ行ってしまったら…… “ベビたん”からこんな言葉を浴びせられるであろうと覚悟していたはずなのに……
私は何の覚悟も出来てはいなかった。
『日々に押し流される事』へ逃げ込むという罪悪が、この様な不幸を呼ぶと言うのに!
このノートの子、安岡くんは……ベビたんとは異なる理由、方法で殺められたけれど……
私がベビたんに抱いてしまったのと同じ様に、この子の親たちも……この子の事を“不都合”と感じ……それが最終的にこの子を殺める事に繋がった。
陽葵は何をどこまで感じ取ってしまったのだろう。
まだ最後まで読んでいないから
きっと
この子と母親の“禁忌な関係性”で吐いたのだろう
そう思いたい。
そうではなく
もし
『子供を不都合と考えた』事に対して吐いたのであれば……私も康雄さんも……そして奥様でさえ、罪の深さは違えど同罪だ。
そう考えると血が凍り、手が震える。
私の罪深さは明白なので当てはまらないが……『奥様や康雄さんの様な“愛情の泉の中に僅かに嫌悪の渦が混じり込む”のは、人の世では仕方のない事なのだろう』と……大人なら考える。
しかし、優しく真っ直ぐな陽葵の心を、こんな『大人』で塗り潰したくはない。
安岡くんの文面はこの『大人』でベッタリと塗り潰されていて
彼は自分の手が『母親の征服欲と色欲』で汚されている事に悲鳴をあげながらも、その“るつぼ”に引きずり込まれていった。
それは
Child Sexual Abuseと言われるものに違いないのだろう。
しかし陽葵が“他人”のそれを垣間見なければならない事など無い!
だから
「陽葵はこれを……読んじゃいけない」
そう言ったのに……
陽葵から
「これは、私と安岡くんとのグループワークノートなの! “グループワーク”としては、今、読まなければいけないのだと思う! 違う?!」
と問い詰められた。
陽葵は……その優しさ故に、安岡くんの事でどれだけ苦しい思いをするのだろう……
私は、陽葵の優しさと愛のお陰で、こうして生きていられるけれど……
安岡くんは……もうこの世には居ない人なのに……
またノートを読み始めた陽葵は
目からいっぱい涙をこぼして
「安岡くんはこんなにいっぱい『生きたい』って叫んでいるのに…… どうしよう」
と叫んでしまった。
私にもどうしていいか分からない。
でも、この世で一番大切に想う陽葵を……例えベビたんから恨まれたとしても……私の命に代えても守っていくんだ!
だから私は陽葵をこの腕に抱き込んで
「大丈夫! お母さんが! マーちゃんが居るから!! 大丈夫!」
と繰り返した。
。。。。。。。。。
イラストです。
涙を流す陽葵ちゃん




