表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポチと陽葵  作者: 黒楓
30/50

第二部 不都合な子供たち  ⑤ 摘蕾

 今回は“伊麻利(いまり)さん <マーちゃん>”視点です。




 “グループワークノート”に書かれた一行一行が私を突き刺す。


摘蕾(てきらい)』という言葉が……私を容赦なく奈落へ突き落す。


 椅子の上でぐったりと弱っている陽葵が、目の前に居るというのに……私の想いや視線は……自分が()()()しまった“ベビたん”へ向いてしまっている。


 本当に私はダメで自分勝手だ。


 陽葵を守りたくて読み始めたこの『遺書』に、私自身が砕け、震えて、挙句の果てには……弱っている陽葵に介抱されている。


 “彼方”へ行ってしまったら…… “ベビたん”からこんな言葉を浴びせられるであろうと覚悟していたはずなのに……

 私は何の覚悟も出来てはいなかった。

『日々に押し流される事』へ逃げ込むという罪悪が、この様な不幸を呼ぶと言うのに!


 このノートの子、安岡くんは……ベビたんとは異なる理由、方法で()()()()()けれど……


 私がベビたんに抱いてしまったのと同じ様に、この子の親たちも……この子の事を“不都合”と感じ……それが最終的にこの子を()()()事に繋がった。



 陽葵は何をどこまで感じ取ってしまったのだろう。


 まだ最後まで読んでいないから

 きっと

 この子と母親の“禁忌な関係性”で吐いたのだろう

 そう思いたい。


 そうではなく

 もし

『子供を不都合と考えた』事に対して吐いたのであれば……私も康雄さんも……そして奥様でさえ、罪の深さは違えど同罪だ。


 そう考えると血が凍り、手が震える。


 私の罪深さは明白なので当てはまらないが……『奥様や康雄さんの様な“愛情の泉の中に僅かに嫌悪の渦が混じり込む”のは、人の世では仕方のない事なのだろう』と……大人なら考える。


 しかし、優しく真っ直ぐな陽葵の心を、こんな『大人』で塗り潰したくはない。


 安岡くんの文面はこの『大人』でベッタリと塗り潰されていて


 彼は自分の手が『母親の征服欲と色欲』で汚されている事に悲鳴をあげながらも、その“るつぼ”に引きずり込まれていった。


 それは

 Child Sexual Abuseと言われるものに違いないのだろう。


 しかし陽葵が“他人”の()()を垣間見なければならない事など無い!


 だから


「陽葵はこれを……読んじゃいけない」



 そう言ったのに……


 陽葵から

「これは、私と安岡くんとのグループワークノートなの! “グループワーク”としては、今、読まなければいけないのだと思う! 違う?!」


 と問い詰められた。



 陽葵は……その優しさ故に、安岡くんの事でどれだけ苦しい思いをするのだろう……


 私は、陽葵の優しさと愛のお陰で、こうして生きていられるけれど……

 安岡くんは……もうこの世には居ない人なのに……



 またノートを読み始めた陽葵は

 目からいっぱい涙をこぼして


「安岡くんはこんなにいっぱい『生きたい』って叫んでいるのに…… どうしよう」


 と叫んでしまった。


 私にもどうしていいか分からない。


 でも、この世で一番大切に想う陽葵を……例えベビたんから恨まれたとしても……私の命に代えても守っていくんだ!


 だから私は陽葵をこの腕に抱き込んで

「大丈夫! お母さんが! マーちゃんが居るから!! 大丈夫!」

 と繰り返した。





 。。。。。。。。。





 イラストです。



 涙を流す陽葵ちゃん






挿絵(By みてみん)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ