第一部 ぼっちポチ ㉔ 数年後の二人
いよいよ第一部の最終章!
エピローグ的な感じです!(^O^)
私の子供時代は、いい思い出は余りないのだけど……
その数少ない思い出のひとつは朝ごはんで食べたアジの味醂干し! たまに歯にくっつくのが玉に瑕だが甘辛い味もさることながら、その香ばしいかおりで食が進んだ。
で、今もそれをパチパチとあぶっている。
私の隣では……陽葵が“サバのお味噌汁”へのチャレンジの真っ最中だ。
この子、水を張ったお鍋にサバ缶の汁を加え、冷蔵庫から出して来たすりおろししょうがのチューブをブニュググと絞って火を点けた。
「ねえ! おかあさん!」
陽葵はクラクラ煮立った鍋の上で、キャベツと舞茸をブチブチむしりながら言葉を継ぐ。
「中学生になったら、サーフィン始めていいって、言ってたよね!」
「えっ?!」
私は火を止めて……やむなく頷く。
「うん……まあね……」
「海斗にいちゃんが教えてくれるって!」
ああ、やっぱり!!
紺野さんのところの一人息子の海斗くんは今年、高校に上がった。
紺野さんとは家族ぐるみのお付き合いなので、私もカレが中一の頃から、良く見知っているのだが……本当にいい子だ。
紺野さんがウチの陽葵を娘に欲しいと思うのと同じくらい、私もカレを息子に欲しい。
そんなカレに陽葵が好意を抱かないはずはないし、私だって陽葵を任せるのなら海斗くんが良いと思う。
カレみたいな子とお付き合いしていたら……私の人生も、もっとマシだったと思う。
それにサーフィンもとても上手だし……
でもなあ……
このモヤモヤは……
少し説明が必要なようだ。
私達が結婚して間もない頃、紺野さん行きつけのサーフショップ主催の“浜辺でのBBQ大会”があって、私達家族も誘われた。
当日、康雄さんは、サーフショップ御用達の肉屋を通じ、黒毛和牛A5のお肉を“見え見え”の匿名で、どっさり差し入れした。
私は私で生まれ育った土地のやり方で、次々と炭台の火を起こした。
これがショップのオーナーである黒田さんに大ウケして、私は『火起こし名人』の称号を得て、私達家族も“KURODA組”の一員となった。
最初はBBQと大会での応援要員(黒田さんはプロサーファーでもあったので)だったのだけど、康雄さんがボディボードを始め、しかもゲキはまりで……カレと黒田さんは更に親交を深めた。
カレは何の目的も無くこういう事をする人ではないので……ボディボードが上手くなった分、他の“何か”に腹ばいになっているのだろうと想像がついた。
だけどカレは私と居る時には目一杯の愛情を私に注いでくれているので、『大人としての節度越えなければよし』としていた。私の側にも“秘め事”はあるし……
話が少し反れたが私の杞憂はここだ。
殿方というのは、いくつになっても……こういうものらしい……。
ウチの主人でさえこれなのだから、バリバリのサーファー連中の目に陽葵はどう映るのか?……
陽葵はすくすくと育って5年生の頃には、ランドセルが背中にポツリのセミ状態になって、何ともみっともないから……お姉さんたちが背負っているようなリュックにシフトした。
いつもは髪を三つ編みおさげかツインテにしているので、年相応のほっぺのふくらみが顔をあどけなくさせているが、一旦髪を下ろすと、ドッキリするほど大人っぽく見える。
そうそう、海斗くんの真新しい制服が届いた時、私と陽葵はちょうど紺野さん宅にお邪魔していて……
確認のために試着した海斗くんの制服姿があんまりにもカッコよかったので……『隣に女子を立たせてみよう』という事になった。
しまってあった紺野さんのJK時代の制服(スカート短め)を……「さすがに今、私が着ると怪しげな風俗のイタイお姉さんになるから」と自分が着る代わりに陽葵に着せてみると……
全然普通に着こなせて……どこから見てもJKになった。
恥ずかしがる陽葵と海斗くんにはお構いなしに、私と紺野さんはスマホでふたりの撮影会をしてしまった上に、悪ノリで、ふたりに買い物を申し付けて、そのままの恰好で表へ出してしまった。
こうしておけばお互いがお互いの“虫よけ”になると……
こんな陽葵がウェットスーツにボードを抱えて波間に立ったら……海斗くんが付いていても心配だ。
そう言った訳で
私は陽葵を説得しようと試みる。
「まずはお父さんに相談してみないと……」
「お父さんはいいって言ってたよ」
陽葵は鍋にサバ缶の身をボトンボトンと落としながら言い返して来る。
『ったく!康雄さんったら!』
私は心の中で独り言ちる。
「せっかくサーフィン行ってもあなたの面倒を看るんじゃ海斗くんが可哀想だよ」
陽葵はこれもサラリと打ち返して来る。
「海斗にいちゃんが『オレがバッチリ教えてやる』って言ったんだよ」
う~ん……海斗くんの……その下心はかわいい。紺野さんの方からもキッチリ言い含めてもらっているから、海斗くんは、陽葵に無茶はしないだろう。その“範囲内”での下心だから……
なのに……私の心はモヤモヤするのだ……
「あ、でもさ、サーフィンやり始めると髪ボロボロに痛むんでしょ?バサバサになるし……色抜けで……校則違反の茶髪になるわよ」
「サーフィンで色抜けして茶髪、金髪はこの辺のコじゃ当たり前だよ。それに、あんまりにも痛んだらショートにしちゃう!」
「それは困る!! おかあさん、陽葵のふんわりとした手触りの良いロングヘアが好きなんだもん」
「う~ん!! それを言われると……辛いなあ」
と、陽葵は合わせ味噌をお箸で溶かし入れながら唸った。
なので私は、心の中でため息をつく。
『仕方ない……黒田さんにもフォローを頼んで置こう。カレの睨みがあれば、地元のヤンチャどもは抑えられる……』
「まあ、本当にサーフィンをやりたいのなら、最初はキチンとスクールで教わりなさい。お父さんから頼めば黒田さんから直々に教えてもらえるから! それが最低条件!」
陽葵はほんの一瞬、がっかり顔だったが、すぐにその顔に笑顔を張り付けた。
「うん、わかった! ありがとうおかあさん お味噌汁できたよ、ご飯は炊けてるし……お父さん、呼びに行って大丈夫?」
結局陽葵は……康雄さんに“ごろにゃん”して、スクールの予約を取り付けていた。
--------------------------------------------------------------------
朝食後、康雄さんは陽葵の依頼を言い訳にそそくさとサーフショップへ出掛けて行った。
私と陽葵は定例の飾り棚掃除をしている。
「当面、ボードはショップで借りるとして……ウェットスーツは買わないとね。私は良く分からないから紺野さんに付き合ってもらおう」
いま手に持っている奥様と康雄さんの結婚写真が、ちょうど半透明の鏡になって、ぱっと笑顔になった陽葵を映し出す。
「海斗くんにも来てもらう?」
「え~!! えへへへ」と陽葵は照れ照れになって、手に持っていた私と康雄さんの結婚写真を抱き込んだ。
この2枚のフレームは、いつもお仏壇をはさんだ左右に置くようにしている。
初めて、そんな風にフレームを置いた時、康雄さんが
「オレじゃなく仏壇が両手に花だ」とのたまって、
「パパ!最低!!」と陽葵になじられたていたのが……
つい昨日の事のようだ。
幸せな月日の……時間の流れは、陽葵の成長と相まって、なんと早い事か!!
「でも、どっちのお父さんもカッコイイし…… ママもおかあさんもかわいい」
「ありがとう! お父さんと奥様はもちろんその通りだけど……私については気を遣わなくていいのよ。良く言って“馬子にも衣裳”レベルだから……」
「へんなの! おかあさんだって奥様じゃん! ママの事は普通に“真理子さん”とでも言えばいいのよ それにね!」
そう言って陽葵は私の肩に手を掛ける。
「マーちゃんはとってもとっても可愛い」
こう言われて私はドキン!とする。
「だから、いっぱいキスしていい?」
私がそっと目を閉じると……
陽葵は、言葉通りにいっぱいキスをくれた。
私の“秘め事”……
それは
今でも陽葵と
恋人同士って事!♡♡
これにて第一部は終了です。
お付き合いいただきありがとうございました<m(__)m>
次回からは第二部になりますが……その冒頭は、この回の続きの様な感じです(*^^)v
引き続きお付き合いいただければ幸いです(#^.^#)
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!




