第一部 ぼっちポチ ㉑ ポチ、胸の内を告白する
明日は、康雄さんは半休にテレワーク、私は1日オフなのだけど、陽葵は普通に学校なので……私たちは先に夕食を取ることにして、私はトートーからエプロンを出し、手伝いたがる陽葵にもエプロンを着けさせた。
康雄さんにはお酒などの飲み物の用意、陽葵にはバケットをパンナイフで切ってもらうのと配膳をお願いして……私は買って来たカットフルーツと鴨のパストラミをアレンジして、オレンジソース仕立ての鴨と水菜とカットフルーツのサラダにカットメロンの生ハム包みを作り……あと、鶏ささみのレンジ蒸し(明太子と梅肉あえの2種)も追加した。
ふたりにはテーブルを挟んで向かい合って座ってもらい、グラスにスパークリングワインとオレンジジュースを注ぐ。
胸板の厚いベストにネクタイ姿の康雄さん……そして、紺のボレロに後ろ結わえの緩くウェーブした髪をふんわりとなびかせている陽葵の大人っぽさに……ドキリとする。
その様が、カレとその奥様のデートの一幕を彷彿とさせ、私の鼓動は少しばかり早くなる。
でも程なく陽葵は“育ち盛り”に立ち戻って、スーパーで作り置いてからずいぶん時間の経った唐揚げを爆食いし始めた。
ああ!陽葵に!! と思っただけで目の端に涙が溜まる。
「どうした?」
心配そうに声を掛けてくれる康雄さん、陽葵も箸を止める。
「あの、揚げたての唐揚げを……陽葵に食べさせてあげたいんです。料理の後の掃除はキチンといたしますから、どうか作らせて下さい。」
康雄さんはホッとした顔で言ってくれた。
「そんなこと、柏木さんの自由にしていいんだよ。今日からここはキミのウチなんだから……陽葵も食べてばかりだけじゃなく手伝うんだよ」
ふたりの笑顔に……
私はまたメソメソと泣いてしまった。
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陽葵を先にお風呂へ送り出して、康雄さんとグラスを傾ける。
康雄さんが勇気を出してくれたから、私も勇気を出さなきゃ……
グラスの中身の力を借りて!
グイッ!と飲んだら、カレ、また注いでくれたのだけど……
私は小さく深呼吸した。
「康雄さん!」
カレが優しい眼差しを向けてくれるので私はまた泣きそうになる。
「私は……私のカラダの事で……まだ言っていない事があるのです。」
「キミが傷付く様なら……言わなくていいよ」
カレはこう言ってくれたけど、私は頭を振って言葉を継ぐ。
「こどもの……事です。 私は酷いDVの……繰り返された凌辱の果てに……身ごもってしまいました。それがオトコにバレて……更に酷いDVを受け続けてしまい、 “流して”…… こどもを…… 殺してしまったんです。 泣きました! さめざめと…… でも、その心の内で安堵したのです。『こんなオトコの子供、産まずに済んで良かった』と だからどうか こんな人でなしの私との関係はセフレにしてください。 そう言い切って下さい!」
康雄さんの目が……少し悲しくなった気がした。
「オレがさっき出したメール、読んでくれたよね」
「はい」
「それでも、オレにセフレになれと? オレだって……キミのからだを思えばこそ、キミと充分に繋がり得ない身なのに……」
私はもう完全に涙声になる。
「はい! だからなんです! あなたと愛情で繋がったら……きっと、こんなにも優しいあなたのこどもなら、産みたいって思ってしまう。でもそんな風に思ってしまったらベビたんに……名も無く途絶えてしまったこどもに申し訳が立たないんです」
しゃくり上げる私の手からそっとグラスを取り置いて……康雄さんは両手で私の手を包んでくれた。
「キミの気持ち……理解できるよ。そしてオレの気持も……理解してくれたよね だったらいいじゃないか! キミのベビたんもオレの子供で……陽葵もキミの子供……オレ達の子供はこの二人だけで……いいじゃないか」
その言葉に
私、
ほぼ無意識にカレにキスしてた。
それが取っ掛かりで
お互いがお互いを
自分が自分を
ほどき、むき身にしていた。
しばらくは夢中だったけれど
遠くでパタン!と音がしてパタパタ音が近付いて来て
私達はドギマギとドアの様子を伺い、陽葵の足音がカノジョの部屋に落ち着いてから……
そそくさとバスルームへ連れだった。
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それはこの間のバスルームでの“証”の続き
カレ、今度はヤセ我慢しないで……
私のブチの一つ一つでさえ、くちびるで愛してくれた。
私も“愛しい猫の耳”に顔を近づけようとしたのだけど、すぐキスで阻まれた。
深く深く潜ったキスの海からようやく浮き上がって息継ぎをしたとき……
カレの口から
「伊麻利……」って言葉が零れて
私は涙に濡れた頬をカレの耳元に押し当て……喘ぎ囁いた。
「あなたが素敵過ぎて……
私は……
乱れてしまいます……
どうかこれ以上は……
柔らかなお布団の上で……
あなたを沈めて下さい……
陽葵から一番遠いところで……」
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もうその必要はなかったのだろうけど、カレは私が受け入れやすい様に、ちゃんとグッズを使ってくれた。
でも、ほら
もう
こんなで
幸せな洗濯物が
増える
そのあいだじゅう
ずっとずっと
目を開ければ
カレの顔を見続けていられた。
いっぱいいっぱい
カレを胸に
抱けた。
いや、腕だけではなく
カラダ全部で
カレの全部を
抱き続けた。




