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ポチと陽葵  作者: 黒楓
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第一部 ぼっちポチ  ① ポチは不採用

 イラストは“ポチ”こと伊麻利(イマリ)さん



挿絵(By みてみん)








 件名/【選考結果のご連絡】株式会社 庚申


 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 柏木 伊麻利(イマリ) 様


 株式会社庚申、採用担当の鈴木と申します。


 この度は、多数の企業から弊社へご応募頂きまして、誠にありがとうございます。


 さて、書類選考の結果についてですが、厳正なる選考の結果、

 誠に残念ではございますが、今回はご希望に沿いかねる結果となりました。


 ご期待に沿えず大変恐縮ではございますが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。


 尚、お預かりした応募書類につきましては、弊社にて責任を持って破棄いたします。


 柏木様のより一層のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。


 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。




 不採用のメールをあからさまに表示したコタツの上のタブレット。


 電気ケトルのボタンがカチン!と戻って湧き上がりを知らせる。


 私は、狭いベランダから抱えて来た洗濯物をバサリとカーペットの上に投げてため息をつく。


「また書かなきゃ」


 タブレットを押しのけ、真新しい履歴書用紙を広げ、したためる。


『柏木 伊麻利 …… 満38歳』と


 。。。。。


『もう二度と戻ってくるな!』

 この部屋を借りる為に頼み込んで渋々保証人になってもらった兄は私にこの言葉を投げ付けた。


 DVカレシからの暴力が警察沙汰にまでなってしまって

 私は長年勤めていた職場はおろか、狭い故郷の街やそこに住む人々から追われ、遠いこの地のこのアパートに逃げて来た。


『のほほんと仕事をしていたわけではない』と思っていたのだけど……

 とりたてて資格や特技を持たないアラサー崖っぷち女の……慣れない都会での仕事探しは想像を超えて困難を極めている。


 自分が何の価値も持ちえない事をまた身に染みて思い知らされ、ただでさえ崖っぷちの私は、もう谷底へ突き落されたように、度々無気力の沼に沈み込んだ。


 ああ、もう 死にたいかも……


 だけどもし私が、今カンカン聞こえて来る踏切に身を投げても、だれも遺体の引き取りに来ないだろう。


 私は自分が、アパートの外階段で踏み潰されていたゴキブリに思える。

 ひしゃげ崩れ、グロテスクな中身をさらけ出している。


 絶対に死ねない!!


 死んでからもまた

 身ぐるみはがされ、あらゆるものをさらけ出される恥辱を受けるのは

 死んだ身にも耐えがたい。


 死なない為に、なにか食べなきゃ



 私は乏しい冷蔵庫の中身を取り出し、狭いキッチンに並べた。




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