『醒めない夢』21
21.☑
~深山康文と果歩の結婚生活 ⑱
今の俺の立ち位置……
謂わば、俺は親父から勘当されたようなものだ。
くそっ。
果歩は俺を責めるような素振りはするものの、ひたすら耐えてるだけ。
もしかして……
俺ってもう怖いモンなし?
無職じゃあ訴える先もないのだし、好き放題ってこと?
笑いが止まらないな。
このまま離婚さえしなければ相続が例え果歩だろうと
俺だろうと同じだろ?
俺は夫なんだから金には困らないってこと。
一時とはいえ、絶望の淵にいたはずの俺なのに……
気付いた今の状況に笑いを止められなかった。
高を括っていた俺は女と会うのを止めなかった。
そんな俺は馬鹿だった。
小学生でも分かることを頭の中がお花畑で分かってなかった。
親父からの贈与分の通帳とカードはまだ親父が持っていて
俺も、そしていうなら果歩も、親父を通さないと
実際は1円だって勝手には使えないのだ。
果歩は育休中、俺は就活……そして我が家の収入はゼロ。
なのに女の為に果歩に無断で80万位使っていた。
もはや余分に使える金はない。
2度女をこちらに呼び寄せたが3度目は軍資金が底を
ついてしまい、叶わなかった。
-
そうなると、することがなくなった。
俺は就活に身を入れるしかなくなった。
変な言い草だが。
◇ ◇ ◇ ◇
短期間のうちに言葉通り義父は私に小分けにして50万円ずつ
振り込んでくれ、今通帳は200万円にまでなっている。
このまま1000万円まで振り込んでくれる予定。
深山家は随分と財産があるようで驚いている。
現金で7000万円程あるのも随時名義替えをしてくれる
ことになっている。
ただし、私と碧の保険として……
そして私を信用して……
ひとまずのところ、持てる現金を名義替えするだけのこと。
この先義両親にだってお金は必要だから、あとは義両親亡き後
残った額をいただけるとのこと。
不動産、株、そういったモノの名義も息子の名前には
一切しないとおっしゃった。
名義は私にして孫娘の碧に多く残したいと。
万が一私が再婚するようなことがあれば、碧に
8割を相続させることが条件になっている。
私は経済的に守られている。
だからギリギリまで夫とのことは修復に向けて頑張ろうと思う。
こういうの、駄目元っていうのかな。




