『醒めない夢』19
19.
~深山康文と果歩の結婚生活 ⑯
深山家の財産
「私の目の黒いうちに少しずつ財産は果歩さんと孫娘に譲渡するよ。
果歩さんとは養子縁組もする。
私の死後お前には慰留分がいくだろうが、なるべく小さな額になるよう
弁護士に相談するつもりだから、そのつもりでいろ。
外国から女を呼び寄せたりして、どれだけ金を注ぎ込んでるのか知らんが、私の金がそんなことに使われるのは心外だからね、アテにしないでくれ。
収入も無いのに馬鹿なことばかりしてると、不安定で不幸な老後
まっしぐらだぞ。
よく考えて行動しろ、いいな!
私は仮に果歩さんとお前が離婚して他人になっても
養子縁組した果歩さんのことは娘としてこの先も接するつもりだ。
また将来果歩さんが誰かと再婚したとしてもな、娘として
先方へ嫁がせるつもりでいる。
それ位の覚悟で果歩さんとは親子になるつもりでいるから……
心しておいてくれ」
「息子の俺は切るってことなのか? 浮気くらいで?
彼女はたまたま旅行でこっちへ来てるだけで……その……別に」
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「問答無用!
全てバレてる。
見苦しい言い訳は止めなさい!
経済的に苦しくて惨めな老後が嫌なら、果歩さんと碧を
大事にして浮気心はこの先封印し、真面目に働けばいいだけのこと。
お前に足りないのは倫理観と想像力だ。
果歩さんから離婚を言い出されないのをいいことに浮かれて好き勝手
しているようだが、果歩さんはたまたま今育休中で休んでるが国家資格を
持つ女性なんだ……経済的には自立できるのだから、いつ逃げられても
しようがないという認識がお前には不足しているんじゃないのか?
人を苦しめたら己には倍返ってくる、それを忘れるな!
今後私からお前に何かを忠告したり怒ったりすることはない。
私はわたしのやるべきことを粛々とやるのみだ。
母さんにも私の遣り方に賛同してもらっている。
最後にひとつだけ……。
果歩さんを何度も傷つけ苦しめている限り、この先の
お前の人生は終わりだよ」
俺は親父に一方的に押されまくりで反論することも叶わず
茶の一杯も出されず実家を後にしたのだった。




