『醒めない夢』16
16.
~深山康文と果歩の結婚生活 ⑬
反省?
反省という言葉はないンだな?
反省という言葉を持たぬ俺様な夫は言い放つ。
「どうしてこんなことしたの?
クビだよ? 俺。
どんな思いで入った会社だと思ってンの。
ただの遊びなんだからさぁ、俺の気持ちが落ち着くまで
待ってくれりゃあよかったんだよ。
飽きたら、止めたのに……」
はぁー!!!
呆れるばかりの言葉の羅列に果歩は…顎がガクッと
外れそうになった。
単身赴任前の……
若い女子との遊びを知る前の……
私の知ってる真っ当な人間だったはずの夫は
どこへ行ってしまったのだろう。
今私の目の前にいる男は一体誰なのだろう。
若い肉体に溺れている最中の男性は、もう妻の知っている
夫ではなくなると某websiteに書かれてあったのだけれど
シタラリ期とでも言うのだろう、まさしく今の夫がそれだった。
◇ ◇ ◇ ◇
女と引き離されて日本に帰って来た夫は会社もクビになり
次の会社を捜す羽目になった。
会社は勿論のこと、私の両親や自分の両親にまでも私の直訴で
浮気が知られてしまい、自業自得とはいえどこにも身の置き所の
ない状況になっている。
そんな夫はすこぶる私に冷たい。
家に居ても最小限の会話しかしてこない。
つらい。
すごく辛くて精神的にキツい。
だけど、それでも女との関係が続くよりはずっとマシだ。
私にやさしくしてくれて、私を大切に想ってくれていた夫が
恋しくてたまらなかった。
私は夜になるとめそめそ泣く日が続いた。
なのに、そんなに悲しくて悔しいのに不思議と離婚の二文字は
浮かばなかった。
しばらくすると、あんなにイライラ感が半端なかった夫の
雰囲気がある日を堺にガラっと変わった。
相変わらず会話は少なかったけれど。




