『醒めない夢』12
12.
~深山康文と果歩の結婚生活 ⑨
凸(突撃)
どこまで信用していいのか分からないけど、せめて夫の暮らす部屋から
女の影が消えていたら、私のことを少しでも気遣う気持ちがあれば
最低限連れ込むことは止めてくれるはず……と
そういう想いを膨らまし始めると私はいてもたってもいられなくなった。
◇ ◇ ◇ ◇
そして母に娘を預け再度夫の暮らす彼の地へと向かった。
今回は合鍵がある。
ドアの前で私は深呼吸した。
夫がまだ相手を家に入れて現地妻扱いしているとしたら
鉢合わせの可能性もある訳で……私は少し緊張した。
ドアノブに手を掛けてみる。
よしっ、鍵は閉まってる。
留守の可能性が高くなった。
鍵を差し込んでみる。
開いた。
玄関で中の様子を探りながら部屋に入る。
人の気配がないことを確認してほっとした。
私は空港周辺で買った缶コーヒーを開けた。
旅の疲れを癒した後、部屋の探索に乗り出した。
まず風呂場。
浮気を突きつけられてるんだから普通ならあるはずないと思うのだけど、やっぱり排水溝には流しきれなかった長い髪の毛があった。
それを見て眩暈がした。
もう探索しなくてもいいかなぁ~これで証拠充分だもんね。
またそれらの証拠を画像に撮った。
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そして寝室に入ってみると、以前来た時には見なかった
派手なタンクトップとショートパンツが散乱してた。
嫌だったけどゴミ箱を覗いてみる。
昨日か一昨日か、確実にやったと思われるブツがすぐに
分かる形でそのまんま放棄されている。
だらしのない女とだらしのない男。
夫は今まで避妊具を捨てる時、ビニール袋に入れるか
紙に包んで捨てていた。
異国に来て奔放になったのだろう。
放蕩の限りをつくしているのだ。
時間のある時に合う浮気とは違う。
夫婦のように毎日抱き合って寝ているンだ。
吐き気がした。
ここにきて、がっつり〆る為に本当に興信所に依頼することを
私は決心した。
そして動かぬ証拠を掴む。
今持っている画像だけでも結構な証拠にはなるけれど
如何せん、夫と女のツーショットが撮れていない。
◇ ◇ ◇ ◇
私は彼らに挑む決意を胸に、自分の気配を消して日本に帰った。




