72 つよつよミミックのダンジョン挑戦(ハコザキ視点)
ボクはミミックのボックスを台車で押しながら東京ダンジョンの地下を目指して移動中だ。
横にはアルカちゃん、それにエスペランサさんがいる。
とりあえず地下八階までは到達できた。
今のところ国内のトップDプレイヤーは地下二十階以下になると配信が出来なくなっている。
それはどうやら地下二十階より下は国家機密レベルになっているからだ。
だから二十階より下になると、個人配信ではなく、国の公式チャンネルでの配信という事になる。
下手に地下二十階より下を個人配信すると、それこそDプレイヤーの資格を消失する場合も有るからだ。
だが、ボクは謎の配信者ジャスティスであって、箱崎貢という一個人ではない。
だからボクがもし仮に地下二十階より下に行ったとしても、誰もアカウントを止める事は出来ないのだ。
それにシャンツーさんに頼み、あのマンションの部屋に住んでいるのは小国の大使という事にしてある。
こうしておけば、大使館扱いになるので国際問題としてもしあの部屋に置いたメインパソコンに政府の関係者がたどり着いたとしても、踏み込む事が出来なくなるからだ。
この話をシャンツーさんにした時、彼女は大笑いしていた。
でも彼女はそれをバカ話とは取らず、実際にドドンガ王国のボボンガ大使に連絡を取り、あのマンションの一室をドドンガ大使館にしてしまったわけだ。
この発想を思いついた自分自身もなんだが、それを無理なく実現してしまうシャンツーさん、一体彼女は本当に何者なのだろうか……?
「オイ、ハコザキ。何をボーっとしているんだ。この八階のフロアボスの部屋に到着したぞ!」
「えっ!? は、ハイ。わかりました」
さて、このダンジョンも八階より下になると初見殺しの初心者お断りレベルのモンスターばかりが出来るようになる。
この八階のフロアボスは……グリフォンだ!
グリフォンはB級モンスター、Dプレイヤーでもレベル10台ばかりのパーティーでは間違いなく全滅する。
レベル15数人でギリギリ、推奨レベルは20以上四人といったところだ。
「クォオオオオン!!」
グリフォンが鳥とも猛獣ともつかない叫びをあげ、ボックスに襲い掛かってきた。
ボクとエスペランサさんはアルカさんのスキルのおかげで透明化し、戦闘をボックスに任せている。
「フン、B級モンスターのグリフォンか、面白い! コイツは食い甲斐がありそうだ!!」
「ケォオオオンッッ!」
グリフォンが羽を飛ばしてボックスに攻撃を仕掛けた。
だがボックスには傷一つ付いていない。
「フン、オレ様をこんな羽根で倒せると思ったか。舐められたもんだな!」
「ックウウオオオオンツッッ!!」
グリフォンが鋭い爪でボックスに強襲をかけた!
だが、そのタイミングを狙っていたかのように、ボックスは舌を伸ばし、その箱の身体を空中に舞い上げた
「クォ!?」
「甘いわ! 一気に食ってやる!」
ガブッ!!
「グォオオオオン!?」
ミミックの鋭い牙がグリフォンの翼を食いちぎった。
片方しか羽根の無くなったグリフォンは空中に舞い上がる事が出来ず、地面に落下した。
「さあ、これからがエサの時間だ!!」
そう言うとボックスは舌を伸ばし、グリフォンの足を掴んで壁に投げ飛ばした。
「ゲグェェウ!」
壁に叩きつけられたグリフォンの全身は骨が粉々になっているようだ。
「さあ、それじゃあ美味しく味付けしてやろうか。ファイヤボール!!」
瀕死のグリフォン目掛け、ミミックの放ったファイヤーボールが直撃した。
「ギャァアアアオン!??!」
断末魔の叫びをあげたグリフォンがそのまま地面に倒れた。
グリフォンは生命活動を停止……死んだのだ。
アルカちゃんがボックス対グリフォンの対決を動画に撮ってくれていた。
――信じられない、あのグリフォンがしゅんころされてる――
――あのミミック強すぎないか?――
――アレがミミッカちゃんの正体なのかもよ……――
ジャスティスチャンネルで配信されたグリフォン退治は数万の視聴者を集める事に成功した。




