72 つよつよミミックのダンジョン挑戦
とりあえず餌を食ったオレ様は、食い残した服や鎧をそのあたりに無造作に放り投げた。
味はまあまあってとこだったかな。
しかしこのエサを食うのもなんだか最近マンネリ化してきたかもしれない。
まあ、何というか……テレビで見た必殺忍び人とかいうのが悪人退治ってのをやっていたので、それを真似しても面白いかもしれんな。
「オイ、ハコザキ。お前、必殺忍び人って知っているか?」
「ずいぶん古いもの持ってきますね、それ数十年前の時代劇ですよ」
ジダイゲキ? なんだそりゃ。
あの中に出てきた服装は、今のハコザキたちの物とはまるで違った。
どうやらハコザキに聞いたとこ、アレはエドという頃の服だそうな。
アイツらの着ていた服、以前ダンジョンで出くわしたサムライとかいう奴らに似ていたな。
ってことは、あの必殺忍び人とかいう連中はサムライなのか?
サムライはカタナソードという特殊な剣を使い、オオヨロイという防具で身を守るカマクラとかサツマとかいうソルジャーがめちゃくちゃ強かった覚えがある。
カマクラ、サツマ、センゴク、こららの名前で呼ばれたサムライはダンジョンにも出現した。
下手すると今攻略中のダンジョンの地下に入っていくとそこにはそのカマクラやサツマがいる可能性もある。
「オイ、ハコザキ。お前、カマクラとかサツマって知っているか?」
「はいー。カマクラって雪を固めて作った小さな家のことでー、サツマっておいしいお芋のことでしょー」
オイオイ、エスペランサは何を言っているんだ??
「エスペランサさん、それ確かに言葉は合ってるけど、物が全く違うよ。カマクラは鎌倉武士って言って、最強と言われた白兵戦の達人、薩摩ってのは日本の九州にいた最強の侍集団の事だよ」
さすがはハコザキというべきか、コイツは何気にこの世界の事にはかなり詳しい。
しかしそれだと、カマクラだのサツマだののサムライがなぜオレ様たちのいる世界に出てきたのだ?
ダメだ、考えても意味が無さそうだな。
「オイ、ハコザキ。お前、あのダンジョンどこまで行けるんだ?」
「それが、どうもまだどこまで行けるかはわからないんです。Dプレイヤーでも地下二十階より下に行った人はほとんどいない上、もしそこまで到達した人は政府に情報統制されるみたいなので……ボク達はそれより下の情報をまるで知らないんです……」
なるほどな、ようはこの国の偉い奴がダンジョンの情報を教えないようにしているというわけか……。
「よし、決めたぞ。ハコザキ。オレ様は拠点転移の魔法が使える。だから安心して地下に入れるからな。オレ様達でダンジョンの地下二十階より下に行ってみるか!」
「えっ!? まあ……わかりました」
ハコザキの奴が切れの悪い返事をしている。
まあ仕方ないと言えば仕方ないか。
ハコザキもアルカも戦力としては全く期待できない。
エスペランサはあのもう一つの姿だとそこそこの戦力にはなるかもしれないが、今のアイツでは何の役にも立たない。
つまり、もしダンジョン探索をするとして、主戦力で戦えるのはオレ様だけということになる。
だがオレ様には手足がない、だから歩いて移動することが出来ないのだ。
だからハコザキなりアルカなりに運んでもらわないとオレ様は戦えないどころか移動もできない。
だからオレ様がダンジョンで移動する為にはハコザキに運んでもらわないといけないわけだ。
「よし、ハコザキ。今日はもう一旦ダンジョンを出るぞ。後日改めて地下二十階より下に向かうからな!」
「は、はい。わかりました」
オレ様は拠点転移魔法を使い、ダンジョンの入り口に戻った。
そこからタクシーを使い、オレ様達の家に戻り、アルカに風呂でブラシを使って磨いてもらった。
さて、明日からは本格的なダンジョン探索だ。
ハコザキ、アルカ、エスペランサ、それにオレ様……このメンバーでダンジョンの地下二十階より下を目指すぞ!