68 つよつよミミックの部屋移動(ハコザキ視点)
困った事になったな……。
ボク達はエスペランサさんを仲間にしたのだが、彼女はいきなり部屋を移動すると言い出した。
どうやら彼女の言い方では、自分はブラックカードを持っていてその中には二億ユーロ入っているからボク達が一生遊んでも使いきれない程持っているという話だ。
エスペランサさんは僕たちの止まっているホテルのエコノミーの部屋からロイヤルスイートルームに移動すると言い出した。
この部屋の金額は一泊50万円!!
今のボクの持ち金だと一週間いられない。
確かにモンスター退治の助成金とブイアバターの配信での投げ銭を合わせれば以前のボクの収入の十倍以上だが、それでもこの部屋の宿泊料で考えるとあっという間に無くなってしまう。
エスペランサさんはよほど世間知らずなのだろう。
カード以外の支払い方法を現物で出来ると思ったようだ。
彼女はとても高価そうな首飾りを取り外し、コレで部屋代を払おうとした。
——確かにそれなら十分ロイヤルスイートでもお釣り返ってくるけど、それを現物で払えるわけないでしょ!!——
ダメだ、この連中。
まともにこの世界の金銭感覚があるのはボクだけみたいだ……。
ボクはミミックのボックスに留守番をさせてエスペランサさんの首飾りやアクセサリーを売る為に街に出かけた。
えっと、宝石の高価買取なら……恵比寿屋か、トレジャーボックス、あるいはチケット安売り王かな。
あ、シチヤとかゾウ兵ってとこもあったか。
とりあえずは全国チェーンの恵比寿屋にしておこう。
ボク達は恵比寿屋の都内の支店に行ってみた。、
「買取をお待ちの箱崎様ー」
ボク達が呼ばれ、買取の査定が始まった。
「こ、コレはとても貴重な品かと。どこでコレを? まさか、盗品ではありませんよね?」
「はい、彼女はボクの遠い親戚なのですが、お婆さんがお亡くなりなられてその肩身として受け取ったものなのです。ですが東京で部屋を借りるにはお金が必要でしたので……」
「ハコザキ様、わたくしお祖母様なんておりませんわよ」
お願い、エスペランサさん、少し黙ってて下さい!!
「ねぇ、ハコザキ、アタシこの店気に入ったわぁ。アタシの大好きなキラキラ光る石がたくさんあるのよぉ!」
アルカちゃん、お願いだからガラスケースに身体を乗り出して覗き込まないで……。
ボク達は不審に思われたのだろうか?
その後査定が終了した。
「箱崎様、大変申し訳ございませんが、当店ではこの品物をお買取させて頂く事は出来ません。お越しいただきましたのに大変申し訳ございませんでした」
やはりダメだったか……。
たぶん盗品と思われたか、さもなくば偽物と思われたのだろうか……。
ボク達はその後も色々な買取専門店に行ったが、どこの店も結果は同じだった。
散々歩いたボク達は、足で探すのを諦め、スマホから調べたネット掲示板でDプレイヤー御用達のアングラな買取屋がある事を調べた。
「ここなら! 行ってみよう」
ボク達が訪れた場所は買取屋とは書いておらず、占いの館シャンツーと書かれていた。
中に居たのは口元をヴェールで隠した胸の大きくスタイルの良いアジア系の綺麗な女の人だった。
「アラ、お兄サン。どうしたノ? そう、その二人のどちららと付き合えばいいかの恋の相談ネ。ウチは高いけド、確実に当たるヨ。1時間一万円だけど払えル?」
「いいえ、ボクは……箱の中身を占って欲しくてここにきました」
ボクの言葉を聞いた占い師のお姉さんの表情が変わった。
「貴方、それをどこで聞いたのかしラ? ウチは信用できる相手としか取引をしないんだけド。それを知った上でここに来たのかしラ?」
「ハイ、ここの事は他の人には教えません。かならず約束します。
「そウ。わかったワ。それでは箱の中身を見せてもらえるかしラ?」
ボクはエスペランサさんの首飾りを占い師のお姉さんの前に差し出した。