67 つよつよミミックの感心(ハコザキ視点)
ボクは驚いていた。
ネットで言われていた都市伝説、女王パンドラと謎の組織ラビリントスが本当に存在したからだ。
エスペランサさん、彼女はパンドラの娘だという。
でもそれがウソではないのかもしれない……。
何故なら彼女には年齢相応の姿が全く見えないのだ。
言動の幼さ、これはかなり箱入り娘だった為とも言えるだろう。
彼女はあまりにも世間知らずすぎる。
それなのにあの燦々たる有様の中で平気でいれるあの神経。
彼女と同じくらいの年齢の女の子がこのような肉塊が飛び散り、血溜まりが出来ているような地獄絵図を見たら殺到するのは確実だ。
しかしエスペランサさんはそんな光景の中でも表情ひとつ変えなかった。
それは感覚が麻痺しているのか、それともそういう光景を見るのが日常化しているからなのか、それがわからない。
しかしエスペランサさんが同じ歳くらいの女の子に比べると、全く違う世界で生きていたのは間違い無さそうだ。
彼女にはお姫様か、超絶お嬢様といったオーラを感じる。
どうやらイケメン冒険家村田が拉致し、箱の中に閉じ込めて移送しようとしていたのが彼女であり、それを取り戻そうとしたのが彼女の母親である女王パンドラというわけか。
まあ女王は都市伝説で言われていた事なので実際は大企業のCEOだという事が事実との相違というべきか。
しかし私設軍隊を持つ国際的大企業という点である意味一つの小国よりも影響力あるのは事実なんだけどね。
しかし困ったな。
もしこのエスペランサさん、ボク達が匿っていると知られたら今度はボク達が彼女の母親の私設軍隊の襲撃を受ける事になる。
そうなると命の危険性よりもむしろ、この最強ミミックが全部返り討ちにして死体の山を作る事の方が心配だ。、
まあ死体は全部あのボックスが食べるとしても、それ以上にさらに兵団を動員してきかねない……。
ここはエスペランサさんを早く家に帰したあげた方が……。
「あの、エスペランサさん」
「はい、何でしょうかー?ハコザキ様ー」
「ボク達が送り届けるから、お家に帰りませんか?」
「嫌ですわー。折角外に出れたのですから、自由にしたいですわー」
「でも……」
必死で説得しようとするボクに、エスペランサさんは財布からカードを取り出した。
「コレの事を言っておられるのですね。大丈夫ですわ、わたくしのこのブラックカードがあれば、貴方がた全員の一生遊んで暮らせるだけ入ってますから」
まさか、生まれて初めて本物のブラックカードを見る日が来るとは!?
「オイ。エスペランサ、それはジュウマンエンがどれくらい入っているのだ?」
「ジュウマンエン? あら、日本の通貨単位じゃわかりかねますが、そうですね……2億ユーロはありますかしらー」
あまりの桁違いの数字にボクはひっくり返った!!
二億ユーロ!? 日本円にしたらいくらだよ!?
ボクはスマホで金額を調べてみた……すると!
——約314億6,633万1,026円!?——
あまりの桁違いにボクはもう何も言えなかった。
「オイ、ハコザキ。そのニマンユーロはジュウマンエンどれくらいの量なんだ?」
「それが、31万4000個です」
ミミックのボックスはボクの伝えた数字がとんと頭に浮かばないようだった。
「そんなこと言われてもわからん。この部屋に入れたらどれくらいだ?」
「この部屋では収まりきらずに、もっともっと広い部屋が必要ですよ!!」
「何だって? それならピザがどれくらい食べられるのだ?」
「あら、ボックス様はピッツァがお好きなのですねー。ピッツァでしたら一生食べ続けてもキリがないくらいですわー」
確かに、314億円分のピザって既にそれ店舗どころか企業を買えるレベルだ……。
「そうか、それではオレ様にピザを食わせろ。お前はオレ様の三人目の下僕だ!」
「ゲボク、お友達みたいなものですわねー。よろしくお願い致しますわー。ボックス様ー」
そして、エスペランサさんはボク達の仲間になった。