66 つよつよミミックの下僕3(エスペランサ視点)
わたくし、知らない間に寝ていたみたいですわ。
ここは何処かなのかしら?
「ご機嫌よう。わたくしはエスペランサと申しますー。あなた方はどちら様ですかー?」
「ボクは、箱崎貢です」
「アタシはアルカよぉ。ねぇ、アナタなんでそんな箱の中で寝てたのぉ? アタシみたいに疲れて箱を探そうとしたの?」
「オイオイ、お前みたいなワケがあるか、もっと別の理由だろ。例えば、ユーカイとか」
「あら、この声はどちらから? ひょっとしてこの箱の中に何か仕掛けがあるのでしょうかー?」
わたくしが声のした箱の中に体を乗り出すと、先ほどのお二人が何やら必死にわたくしを後ろから引っ張ったのですわ。
一体何があったのでしょうか?
「なななな、何もないから! 何もないから箱から離れてくださいっ!」
「そうよ、そうよ。この箱の中は何もないんだからぁ」
先程のお二人が焦った様子、いったいどうしたのでしょうかー?
「オイオイ。何もないことはないだろ、この中にはオレ様がいるんだから」
「やはりこの中にはどなたかおられるのですねー。ご機嫌よう、わたくしはエスペランサと申します。箱の中の方、どうぞよろしくお願い致しますわ」
ユーカイ? そう言えばわたくし、お母様の別荘に来るためにニホンに来て、そちらに向かう途中から記憶がございませんの。ひょっとしてその時ユーカイされたのかもしれませんわねー。
「お前はエスペランサというのか、オレ様はボックスと言われている」
「まあ。ボックス様ですわねー。その箱の中、窮屈ではありませんかー? 出てきてわたくしとお話ししていただけませんかー?」
わたくしが呼びかけても、箱の中の方は出てこようとしません。
よほど恥ずかしがり屋なのでしょうかー?
「バカか、オレ様の中には誰もいない!」
「あら、それではどうして声が? 遠隔操作のマイクでもあるのでしょうかー?」
「そんなワケあるか! オレ様はミミックだ!」
「あら、そうでしたかー。それで、ミミックって何でございますかー?」
わたくしのこの質問、そんなにおかしなものだったのでしょうか? ハコザキ様とアルカ様、そしてミミックのボックス様が転倒してしまったみたいですわー。
「おおおお、お前、ふざけてるのか? ミミックを知らないとでもいうのか?」
「はい、ミミックとは何でございますでしょうか?」
なぜかここにいるお二人と箱の中のボックス様があきれたような雰囲気を出しています。
わたくし、何か間違えたのでしょうかー?
「もういい、お前と話していると調子が狂う。オレ様はミミック、つまりこの箱そのもののモンスターで何でも食べるモンスターだ!」
「あらあら、何でも食べるって事は、わたくしも食べられてしまうのでしょうかー?」
「お前なんて美味そうだけどな、でもここはハコザキに免じて食わないでいてやる!」
どうやらこのボックス様、わたくしを食べようとしていたのですね。
——でもそんな事をしたら、お母様の私設軍隊が大挙して押し寄せますわー。
「あらこわいですわー。ひょっとしてあの辺りに転がっているモノはボックス様が食べたのでしょうかー?」
わたくしはそのあたりに散らばる肉塊を指差してボックス様に尋ねましたわ。
まあ、あの程度のモノ、小さい頃にお母様に裏切り者の処刑を何度も見せられましたので、何も感じませんが……。
「まだ、食べてないんだが……。お前、あれを見て何も感じないのか?」
「ええ。特に何も感じませんわー。あの程度……見慣れておりますからー」
わたくしの発言に驚いたのはハコザキ様でした。
あら、わたくし何か変な事を言ったのでしょうか?
お母様の軍隊はどうやら引き上げたみたいで、ここにはハコザキ様、アルカ様、それに箱の中のボックス様とわたくしだけがいるみたいですわねー。
ボックス様はわたくしにまだ質問を続けましたー。