65 つよつよミミックの見逃し
ミノタウロスを失った魔獣使いには打てる手がなさそうだった。
「ひえええぇー! 強すぎるー!」
フン、オレ様が強いのでは無い、お前の呼ぶモンスターが弱すぎるんだ。
オレ様は久々のA級モンスター、ミノタウロスを食べ尽くした。
これで当分は腹一杯だ。
「オイ、キサマ。オレ様と会話できるか!?」
「は、はい。な、何でしょうか?」
おやおや、さっきまでの偉そうな態度とはまるで違うな。
「お前にいい事を教えてやろう。お前がアニキとか呼んでいたあのイケメンボウケンカってヤツ、お前の事をバカにしていたぞ」
「そ、そんな、アニキはおれの事をきちんと評価してくれていたんじゃ……」
「アイツの本音を教えてやろうか。アイツはお前に食い残しの不味いモノを渡していたんだよ。
オレの言葉を聞いた魔獣使いが何か狼狽えているな。
どうやら事実を叩きつけてやったのが堪えたようだ。
「そんな、それじゃあおれに毎回女をやるとか言ってたのは……」
「所詮食い残しを後始末させるためだったんだろうな」
オレ様の言う事はどうやら当てはまっていたらしく、魔獣使いのヤツは敵意をオレ様では無くイケメンボウケンカの方に向けたようだ。
「悔しいか? そう思うなら見逃してやる。お前がアイツを倒せるならだが……」
「ボックス様、それでは話が違……」
「黙れ、食われたいのか?」
多分今のハコザキにオレ様の考えを言っても伝わらないだろう。
あの逃げたイケメンボウケンカとやらはキジンカイとやらのイスズとかいう奴を連れてくるだろう。
そうすればわざわざハコザキが誘き寄せなくてもエサが向こうから来るというわけだ。
まあ透明化のスキルの使えるアルカに様子を調べさせての話だがな。
「さあ行け、それで恨みをはらせばいい」
だがそれはコイツには無理な事だろう、なぜならオレ様はハコザキに聞いたが、コイツら人間のスキルはこの異世界に繋がっているダンジョン限定だ。
もしこのダンジョンの外に出れば魔獣使いなんてなんの役にも立たない。
だからアイツがもし恨みをはらすとするならこのダンジョンに戻ってきて魔獣を使うしか無い。
——つまりは、アイツはイケメンボウケンカをここに連れて戻って来れないと力を使えないわけだ。——
わざと逃したイケメンボウケンカがイスズだのキシンカイだのを連れてくる。
そしてこの魔獣使いはソイツに復讐するためにここにイケメンボウケンカを呼び寄せるだろう。
これで二重に策を立てる事で確実にイケメンボウケンカとキシンカイをまとめて食う事ができるわけだ。
とりあえずこのメスどもは解放してやろう。
本音一匹くらいはつまみ食いしたいところだが、それをやると二度とハコザキがピザを用意してくれなくなるかもしれん。
いくらオレ様でも、たかだかメス一匹とピザを天秤にかけるなら間違いなくピザを取る。
「さあ、さっさと消えろ、残っているとオレ様の口に入るぞ!」
オレ様がメスどもを脅すとコイツらは全員走って入り口目指して逃げ出した。
「ボックス様、ひょっとしてイケメン冒険者村田と魔獣使いを逃した理由って……」
「アルカ、ハコザキ。お前ら、透明スキルを使ってアイツらを追いかけろ。オレ様はここで適当なヤツを倒しながら待っているからな!」
「ボックス様、ボクがいないからって勝手に人間を食べないでくださいよ」
「わかってる、何をしている、さっさと行ってこい!」
「わかりましたっ!」
ハコザキとアルカは逃げたイケメン冒険者と魔獣使いを追いかけてダンジョンの外に出た。
どうやら人間はこのダンジョンの中でしか能力が使えないが、アルカやオレ様はダンジョンの外でもスキルが使える。
だからアルカの透明化スキルがあれば問題ないだろう。
さあ、さっさとキシンカイとやらを連れてこい!




