64 つよつよミミックの肉叩き
イケメンボウケンカは情けない声を出してその場にへたり込んでいた。
あらあら、さっきまでの威勢はどこへ行ったやら。
だが許しを乞うても許さんぞ。
お前はオレ様のモノに手を出したんだ。
所詮この世は弱肉強弱だったか? そう、お前の言うとおりだ。
だからお前は徹底的に強いオレ様の前に中になるんだよ。
「くそっ、アニキ、おれがこいつをっ!」
「田部井! テメェ何を」
「アニキはモテないおれのために女をあてがってくれただろ、だからその礼だよ」
フン、仲良しごっこか。
だがオレ様は相手の心が読める。
まあこれもいつか食べたヤツの能力だったかな。
何々、コイツの本音か……。
——コイツ、本物のバカだぜ。オレが食うに値しないドブスをくれてやればホイホイオレの言うことを聞いて。そうだ、こいつをオトリにしてオレはどうにか逃げてやる。鬼神会の五十鈴さんならいつもオレが女を献上してるから助けてくれるはず!——
ほう、なかなかのドクズだな。
ここであえて見逃してそのキシンカイのイスズとかいうのを連れて来させれば次のエサが確保できるってわけだな。
「ボックス様! あのイケメン冒険家村田にとどめをお願いします! アイツのせいで犠牲になった女の子達がたくさんいるんです!」
「キサマ、いつからオレ様に指図できる立場になった? オレ様はオレ様の意志で動くから指図するな!」
さて、あのイケメンボウケンカとやらを見逃してやる代わりにその時間の間お前を食ってやろう、魔獣使い!
しかし残念だったな、お前の信頼している相手は全くお前を信頼していない。
オレ様は魔獣使いの周りにいる雑魚モンスターを舌の一撃で蹴散らした。
所詮有象無象。
圧倒的なオレ様の敵ではないのだ。
魔獣使いは情けない声を出している。
どうやらアイツはこれ以上打つ手が無いようだな。
「くっそー! こうなったら制御のことなんて考えてられるか! アイツを倒せるなら何でもいいから出てこい!」
ほう、少しはオレ様の相手になりそうなやつを呼んだのか。
魔獣使いが呼び出したのは、ミノタウロスだった。
頭が牛で体が人間の巨人型モンスター。
コイツは巨大な斧を構えてオレ様に吠えてきた。
「ブモオオオオォォォン!」
煩い、黙らせてやろうか。
「へ、へへっ。どうだ、コイツはA級モンスターのミノタウロスだ! そこのクソ箱、テメェなんてこのミノタウロスに踏み潰されてしまえ!」
まったく、この程度のヤツにオレ様が負けると思っているとは、おめでたいヤツだ。
さあ、相手になってやるからかかってこい。
「ブモオオオオォォォン!!」
ミノタウロスが巨大な戦斧をオレ様に叩きつけてきた。
どうせ動けない箱の俺様相手なら攻撃が避けられないと思ってタカを括っているのだろうな。
だが、オレ様は避けられないのでない、避ける必要が無いのだ!
オレ様は舌を伸ばしてミノタウロスの戦斧を絡め取った。
「ブモツッ!?」
ほら、返してやるよ!
オレ様はミノタウロスの戦斧を舌で振い、右腕を切り落とした。
「ブモオオオォオオ!?」
ミノタウロスは切り落とされた右手を左手で押さえ、戦いどころでは無くなっていた。
フン、所詮はA級モンスターか。
オレ様は舌を伸ばし、ミノタウロスの足をすくい取った。
そして、一気に何度も、叩く! 叩く! 叩く!!
地面に向けて何度もミノタウロスを叩きつけた。
肉はよく叩くと柔らかくなると言うからな。
もう何の抵抗すら出来なくなったミノタウロスはただの肉塊だった。
オレ様はそのミノタウロスを上方に放り投げ、落ちてきたところを牙で一気に噛み砕いた!
そして絶命したミノタウロスはオレ様が噛み砕き、少しずつ噛んで食べ尽くした。
うむ……久々のA級モンスターだ。これはレベルアップできるはず。
頼りの綱だったミノタウロスをオレ様に噛み殺された魔獣使いはもう放心状態になっていた。




