61 つよつよミミックの余裕(ハコザキ視点)
ボクとアルカちゃんはミミックのボックスをホテルの部屋に置いたまま外に出かけた。
アルカちゃんは妖精族のレプラコーンだが、耳さえ隠していれば肌の色も人間と大差変わらない。
見た感じ、普通の人間の小学生でも通用するくらいだ。
「ねえ、ハコザキ。一体どこ行くのよぉ?」
「アルカちゃん、とりあえず今は黙ってて。後で話すから」
そういうとアルカちゃんは少し不貞腐れていたが、買ってもらうゲームの為に我慢しているのか黙ってくれた。
ボクはタクシーを使い、三十分ほどの住宅街に到着した。
俗に言われるベッドタウンという奴だ。
そこでボクはファミレスにやって来た。
ここは、あのイケメン冒険家こと、村田の行きつけの店のようなのだ。
ボクはアイツのイッタッターアカウントからアイツの最寄り駅を見つけだした。
アイツはそういう危険性よりも最寄りの女の子が釣られる可能性の方を重視し、鍵アカウントにはしていなかったようだ。
だが実はアイツの複垢も既に把握済みだ。
ボクはアルカちゃんの名前とマスクを付けた顔を使って女の子アカウントを作成し、住所をあえて村田の行きつけのファミレスの最寄り駅の隣にしておいた。
すると来るわ来るわ、大量の友達申請が男からめっちゃ来まくった。
お前らどれだけ女に飢えているんだよ。
ボクはあえてイウをせずにアカウントだけにしている。
(このイッタッターに書き込む事をイウと言うのはまあ大半の人が知っているはずなんだけどね、異世界のアルカちゃんとかは意味わからないだろうな)
それでも既にフォロー数が二千を超えた。
そんな中にいたイケメン冒険家の村田がダイレクトメッセージを送ってきたのだ。
――君可愛いね、ボクのパーティーに来ない? 女の子限定の楽しいパーティーだよ――
こんな誘い文句でくるヤツ、大抵はキモいの一言で片づけれそうだが、それでもイケメン無罪。イケメンのキモい行動はユーモアがあるだの、個性的だの、情熱的だので変換されるようだ。
ボクはあえて半分スルーするようなツンデレっぽい態度にしておいた。
でもそれでもイケメン冒険家村田はボクのアカウントにアピールを続け、今日女の子だけのオフ会をするってわざわざ送ってきたのだ。
こちらは参加しますとも参加しませんとも言っていない。
あくまでも様子を見る為にここのファミレスに来ただけだ。
するとファミレスの中に大量の女が集まってきた。
全員イケメン冒険家村田の為に集まったとすると、ある意味感心する……。
ボクとアルカちゃんは兄妹のような雰囲気を出しながら近くの席でイケメン冒険家村田の話を聞いていた。
そのファミレスに何ともうだつの上がらない風貌の薄汚れた男が一人現れた。
その男は村田の席の少し離れた場所に座っている。
ボクはソイツが誰かわかっている。
コイツが女の子を逃がさない為の魔獣を操っている魔獣使いだ。
ソイツは何やらブツブツ独り言を言いながらドリンクバーの飲み物を呑んでいる。
真ん中に近い席ではイケメン冒険家村田のワンマンショーが始まった。
やれどんなモンスターを倒しただの、イケメンに生まれて得した事だの、芸能界に何件もスカウトされているが条件が最も良いところに行く為にあえて断ってるだの、顔がイケメンで無きゃ許されないような気持ち悪いワンマンショーだった。
「おや、今日もう一人素敵なレディが来てるはずなんだけど……どこにいるのかな?」
アイツ……アルカを参加すること前提でカウントしてやがったのか。
「アルカちゃん、とりあえず念の為小型のビデオ撮影できるデジカメ渡しておくから、後は頼むよ」
「えぇー、何よぉそれぇ!?」
バカッ! そんな大きな声を出したらイケメン冒険家村田に見つかってしまうだろ!
「おやおやぁ、そこに居るのはアルカちゃん? せっかく来てるならこっちに凝ればいいじゃない。キミ、最寄駅なんでしょ。こっちの方がそんな冴えない男といるより楽しいよ」
そう言ってイケメン冒険家村田はボクを押しのけてアルカを強引に自分達の席に連れて行ってしまった。