58 つよつよミミックの咀嚼(ハコザキ視点)
ボクは最近感じている事がある。
オトリをやるのも慣れて来たもんだな……。
あえて弱者なら弱者らしくヘラヘラしていると気分を良くした捕食対象がボクに偉そうな態度で疑おうともしなくなる。
このやり方で何人もミミックのエサにしてやった。
これで悲しむ奴なんてソイツの家族か身内くらいのもんだ。
でもそれで悲しむ奴らは、そいつらが泣かしてきた弱者の事なんて見向きもしなかったクズ共ばかりだ。
流石に死んだら今まで及び腰だった捜査もやりやすくなる。
所詮この国では死人に人権なんて無いからな。
このダンジョンの中は日本の法律も通用しない治外法権、だからここで死んでも自己責任。
海外旅行と違い、ここでもし死んだとしても大使館も無いから行方不明扱いか肉親や知人の死亡の非親告で書類申請が通る事になる。
どうやらまだこのダンジョンの案件は法律として成り立つまでなっていないので、色々とグレーだと言える。
だからボクはこの治外法権の場所で社会のクズを抹殺している。
日本の動画サイトではBANされるが、海外のサーバーの動画サイトなら中々足もつかない上、日本よりもアクセス数が多い。
実際最近はボクの配信はJusticeとして海外でも有名になってきているようだ。
――だからボクがオトリをやってミミックが食べる、それでこの流れは成り立っている。
レプラコーンのアルカちゃんは透明化の魔法が使えるので、デジカメを渡せば絶対に見つからない角度から映像を撮る事も可能だ。
最近はボクがやり方を教えてあげたのでデジカメをきちんと使いこなせるようになってきた。
さて、今回の捕食対象の下村聡子、コイツは旧姓鳩元、ボクの小学校の時の担任だ。
何かにつけてボクを目の敵にし、他の児童にいじめられていても見て見ぬふりをしていた。
……いや、今考えるとアイツが率先していじめになる流れを作っていたのだろう。
意味も無く班分けでグループ活動をやらせ、ボクが要領悪いの分かっていながらいじめ気質の生徒のグループに入れ、失敗をわざと誘導させる。
当然失敗したボクが責められる事になるのでいじめにお墨付きを与える様なものだ。
アイツがいなければボクの人生もっと違ったかもしれない……。
だが色々調べてわかったのは、そんな目に遭っているのはボクだけではなかったという事だ。
なおボクをいじめていた側の奴は大体が良い学校に入れている。
あの鳩元が内申書をえこひいきしていたからだ。
その後アイツは教育委員会のお偉方と結婚して下村になったらしい。
それから後は更にいじめに拍車がかかったようだ。
都内でのいじめ自殺、あるいは不登校、それらの裏に大抵あのクソババアが関わってた。
そりゃあエリート様にしたらアイツの事を必死で守るだろうな、いじめで自殺や不登校に追い込んだ奴がいてもあの女が擁護、隠ぺいをした事で内申書は綺麗なままエリートコースに入れたわけだから。
――だがそれもこれで終わりだ!――
ボクはあえて弱者男性として鳩元に下からお願いするような形で頼み込んだ。
――お宝を見つけたけどボク一人ではとても手に入れられそうにありません、だからボクは友達もいないので先生くらいしか頼れる人がいないから誰かクラスメイトと連絡を取りたいのですが……。――
当然アイツが誰も呼びはしないのは想定済みだ。
それよりもお宝と聞いて自分の取り巻きを連れてくるだろう、その上で元々宝の地図を持っているボクをこのダンジョンで殺して証拠隠滅した上で宝の山分けをするだろうな……そこまで考えていた。
だからアイツが取り巻きを連れてくるのも実は想定内、だからボクはミミック相手に魔法通話ですぐに呼び戻して欲しいと伝えておいた。
あのミミックはピザと引き換えにそれを聞いてくれた。
まったく、人間よりモンスターの方が信頼できるってどんな状態なんだろうな。