53 つよつよミミックのボス戦3
アルカがどうにかC級モンスターにダメージを与えられるようになってきた。
だがそれでもこの脆弱さ、A級モンスターの一撃を喰らえば即死確定だ。
そうなるとハコザキだけではオレ様を持ち運びできるヤツがいなくなる。
それだとオレ様はここでモンスターを待ち続けるだけになり、元の強さを取り戻すなんて数万年かかっても無理だ。
そのうちにあまりにも退屈すぎて自我すら崩壊しかねない。
——それだけはマジで勘弁だ!——
普段ボロクソに言っているオレ様だが、実はかなりアルカとハコザキには感謝している。
あの二人がいなければ今頃オレ様はエサにありつけず、あの魔王城廃墟のラストダンジョンで餓死して朽ち果てた箱になっていただろう……。
だがそれはアルカもハコザキも同じ事だ。
もしアルカがオレ様と出会っていなければあのラスダンで透明化無効の感知能力を持ったモンスターのエサになっていたか、そうでなければ戻った村でグロイザーとかいうヤツらに殺されていただろう。
そして、ハコザキはあのオータカとかいうやつにモンスターの囮にされ、死ななくてもいつまでもザコとしてこき使われていただろうな。
今やオレ様達は三人で一つのチームだ。
誰か欠けても成り立たない。
もしここに誰か新しく入るとしたらオレ様が認めるようなヤツでないと無理だろうな。
だがそれに当てはまるようなヤツなんているのだろうか?
まあ考えても仕方ない。
当分はこの三人で動く形になる。
だからハコザキにもアルカにも死なれては困るのだ。
仕方ない、オレ様が面倒を見てやるか……。
オレ様達は四階を過ぎ、五階、六階に降りた。
モンスターのレベルがどんどん上がっている。
どうやらDプレイヤーと言われているヤツらでもここの階層に来れたら一人前と見られるらしいな。
ここの階層のモンスターは、グール、シニアコボルト、エルダーゴブリン、シーカー、ジャイアントバット、ポイズンスライムといった初心者では下手すればすぐ殺されるレベルのC級モンスター達だ。
まあ、オレ様なら牙も魔法も使わず舌だけで倒せるけどな。
この中で少し強いと言えばグールくらいだ。
コイツは痛みを感じないみたいなので殴り飛ばしても首が折れたまま襲ってくる。
仕方ないのでコイツはファイヤボールで燃やすか。
食っても不味いし……。
アンデッド系ってマジで不味いんだよな。
だからアイツらは食うより燃やした方がいい。
オレ様が舌でモンスターを殴り倒し、ハコザキとアルカがそれにとどめを刺す。
コレでどうにかこの階層のモンスターを蹴散らしながらオレ様達は広い部屋に到着した。
「「ギャオオオーン!」」
同時に二頭の雄叫びが響いた。
どうやらこの階層のボスはA級モンスターのオルトロスのようだな。
「ハコザキ、アルカ。お前達は隠れていろ」
「わ、わかりました」
ハコザキはアルカに手を握ってもらい、インビジブルの魔法で透明化した。
「「グルル?」」
オルトロスはいきなり姿を消した二人に困惑していた。
だがコイツらは嗅覚が優れているからな。
この鼻をおかしくしてやるか。
「コレでも喰らえ!」
オレ様は燃えカスになって異臭を放つグールを舌で掴んでオルトロスの鼻目掛けて投げつけた。
「びゃあぁぁぁぁあ! 不味いぃぃ!」
少し舌で触れただけだがグールの燃えカスはマジで不味かった。
「キャウウンッ!」
オルトロスの片方の頭が情けない鳴き声を出した。
どうやらこのグールの燃えカスの臭いが相当ダメージだったようだ。
まあいい、コレでアルカやハコザキを探す事は一時的に出来なくなるだろう。
さあ。今のうちにぶっ殺してやろうか。
オレ様は舌を鋭く尖らせてオルトロスの後ろ足を突き刺した。
「ギァウウウン!」
足を怪我し、後ろ足を引きずったオルトロスがオレ様に飛びかかってきた。
よし、牙で返り討ちにしてやるよ!