49 つよつよミミックの焦り
「なんでこんなに人来ないのよぉ〜!」
「アルカちゃん、素材が悪すぎるよ、いくらなんでも糞ゲーの極みとも言われてるスターゲイザーを配信しても誰も見に来ないって……。せめてまだ有名なドラゴンズスターシリーズとかラスティングサーガ、クロノクロニクルやミレニアムハーツならまだしも……」
コイツらが何を言ってるのか、オレ様にはまるでワケわからん。
だがハコザキとアルカの間では会話が成り立っているようだ。
「だってぇ、スターゲイザーのセリカちゃん可愛いじゃない、まぁアタシには負けるけどぉ。なのになんでゲームではあんなにデザイン変なのよぉ」
「仕方ないよ、スターゲイザーは納期のせいで最高の素材を最低の作品にされたって言われてるからさ、おかげでアニメ化企画まで吹っ飛んで製作会社が倒産したって言われてんだから」
コイツらの会話、まさに異世界の会話だ。
「えぇー、そんなに酷いのぉこれ?」
「アルカちゃんこのひどさ気が付かなかった? スタートからいきなりどこかの森の中に一人いて、隣に歩かないと街に入れないのに」
「全然気が付かなかったわよぉ。すぐに街に入れたからぁ」
アルカのドヤ顔を見たハコザキが驚いていた。
「えー!? あのマップで街のグラフィックなかったのになんで入れたの?」
「だって、そんなのゲーム始まったら右に行けば良いんでしょ、それですぐに街に入れたわよぉ」
「は、ははは、なるほど、確かに昔は右に向かうゲームが多かったからそれなら納得だ」
うーむ、オレ様はこのゲームというものがよくわからん。
だが人間だけでなく妖精のアルカまでそこまで夢中になるほどのものなのか……。
最近ハコザキとアルカはダンジョンに行く様子がなさそうだ。
まあそう言っているオレ様もテレビを見てピザを食っているだけだが、そろそろ飽きてきた。
「ハコザキ、そろそろダンジョンに行くのではないのか? そろそろオレ様この毎日飽きてきたぞ」
「そうですね、ちょこちょこと情報集まってきましたからそろそろ出ますか」
ようやく出かけるのか。
まあ、あのダンジョンがすぐ消える事はないだろう。
ハコザキがオレ様を呼んだ。
「ボックス様、新しい情報がわかりました! ボクはちょっと出掛けてきますから、ピザ頼んだきましたから箱のフリしておいてくださいね」
「わかった、オレ様はテレビ見てるからな」
「アタシやはりスターゲイザーのエンディングまで見ないと気が済まないわぁ、これクリアするまで取り続ければ良いのよね」
「わかったよ、いってくるからね」
ハコザキはどこかへ出掛けたようだ。
さて、どこに行ったのやら。
まあいい、オレ様はテレビでも見て待ってるとするか。
アルカはゲームをはじめてから話もせずに集中している。
そんなにゲームってのが夢中になる程面白いのか?
残念ながらオレ様にはそれほど器用に動かす手が無い。
だからゲームを出来ないしやろうという気持ちもあまり無い。
まあ腕を具現化したりすれば出来るかもしれないが、まだそこまでレベルも回復していない。
オレ様が低下したレベルを回復するにはそこそこ強いモンスターを倒さなくてはいけないが、まだハコザキやアルカがそこまでの階層に行けていない。
まだごくごく浅い階層で雑魚を倒している程度だ。
——このままではダメだ!——
オレ様は確かにこの辺り程度のモンスターなら余裕で倒せる。
だが、本来のオレ様の強さなら魔王軍四天王クラス、いや、人間達はオレ様をラストダンジョンの裏ボスと呼んでいたくらいだ。
そろそろ本格的にダンジョンの地下に入らなくては。
ハコザキとアルカは最近ハイシンとゲームやらでダンジョンに潜るやる気が無くなっている。
さて、どうにかアイツらをやる気にさせてやらんと。