46 つよつよミミックの水平思考
うーむ、どうも消化不良だ。
あのマックスピザってところ、量は多いのだが味は他のピザマッド、キングピザに比べてイマイチだったな。
変わったメニューは多いが、どれもこれも変わってるだけで味としては大した違いが無かった。
ハッキリ言えば、不味いとは言わんが美味しいとも言えん微妙さだった……。
うむ、やはりオレ様が最初に食べたピザマッドが一番合ってるかもしれんな。
まあそれでも他のとこにも当たりがあるかもしれんから探してはみるか……。
「ボックス様、そろそろ配信始めたいんでお願いできますか?」
「わかった、少し待っていろ」
オレ様はハコザキに頼まれたブイアバターとやらをイミテーションの魔法で用意した。
どうやら人間共はこの可愛らしい姿に釣られるようだ。
オレ様が作ったこの姿のイミテーションにアルカが声を付ける。
それをハコザキがエーゾーだのドーガだのにする事でミミッカの完成だ。
どうやらこのミミッカ、人間達にはそこそこ知名度が上がってきているらしい。
成程な。
エサを捕まえるのにオレ様はイミテーションの魔法を使った事は何度もあるが、こんな風に他の奴と組んで存在しないものを作り出してそれで釣る方法は思いついた事が無かった。
これはハコザキのやっているオトリにも似ているのかもしれない。
長年生きてきたオレ様だが、このやり方は覚えておいて損はなさそうだ。
「はいはーい、それじゃあアタシがまた声を合わせれば良いのよねぇ」
「うん、アルカちゃん。お願いね」
「しょうがないなぁ。やってもいいけど、またポテチと……あとプリンもお願いよぉ」
どうやらアルカはすっかりこの世界の食べ物が気に入ったようだな。
まあそんなオレ様ももうピザ無しの生活には耐えれんかもしれんが……。
――ハコザキ、オレ様はお前を恨むぞ……もうアレ無しには生きていけなくなってしまったではないか!――
ノーライフ・ノーピザ、人間達の言葉で言えばそうなるのかな。
とにかくもうピザの為に生きている様なもんだな、オレ様。
「わかったよ、アルカちゃん、そろそろ始まるよ」
「ねえ、ハコザキィ。確かドーガってゲームの配信をやるのもあったりするのよねぇ。それじゃあアタシが声を出してミミッカとしてゲームをやるのを映すのもアリじゃないぃ?」
「うーん、アルカちゃん下手すぎて絵にならないからな……」
「ガーン、そんなぁ……」
オイオイ、そろそろ始まるんじゃないのか、お前ら。
「オイ、ブイアバターとやらは用意してるぞ、使わないならさっさと消すぞ」
「あ、すみません。直ぐ始めます」
そう言ってハコザキはパソゴンにデジカメという二つの魔道具を紐でつなぎ、ハイシンとやらを始めた。
「みんなー、こんばんみー。ブイアバターのミミッカちゃんでーす」
——こんばんみー——
——こんばんみ——
——パンツ見せて——
——今晩みー——
どうやら人間達はこのミミッカというオレ様が作ったイミテーションを楽しんでいるようだ。
それにアルカの声がつく事でコイツらは……いえば幻覚魔法にかかっている様なものだろう。
「ミミッカちゃんね、最近ゲームを始めたんだぁー。ドラゴンズスターってヤツだけど。デジタルアーカイブってので買ってやってみたのぉ」
——また随分懐かしいもんを——
——今ならリメイク版かな?——
——デジタルアーカイブのヤツかもよ——
——天才クリエイター堀口さんの作品か、あの人今どうしてるんだろ——
「それでぇ、昨日ようやくどうにかあんこくこうていカオスを倒しましたぁーわーい」
——おめでとー——
——ウボァー!——
——ウボァー! ってなんすか?——
——ラスダン鬼だよな、アレ——
……コイツらが何を言っているのかがオレ様には全くわけわからん。
だがどうやらアルカと人間達は共通の話題で盛り上がっているようだな。