42 つよつよミミックの心労
アルカはどうにかデジカメの使い方をハコザキに教えてもらい、使えるようになったようだ。
「どう、やっぱアタシっては天才よねぇ」
「いや、フルオートのレコーディングなんて、ボタンを押せばすぐにでも使えるんだけどね。画素の変換とか容量の重さの変換とか……そういう専門的な技術は使わないからな」
コイツ、何を言ってんだ?
魔法の使えるオレ様でもたまにコイツの言っている意味が分からなくなる。
「アルカちゃん、透明化している時は身体に触れていればその物全部が透明になるの?」
「そうよぉ。アタシのスキルは触っている物全部に反応するのよぉ」
だがオレ様には全部見えてしまっているので、どこまで見えていてどこから見えていないのかが分からん。
「でもアルカちゃん、今アルカちゃんベッドの上にいるよね、声が聞こえるから。でも触れているはずのベッドが透明になっていないから触れた物全部が透明になるワケじゃないんだね」
「えぇ? 見えちゃってるのぉ? それじゃあ、えーい」
「あ、ベッドが消えた!?」
成程、そういう事だったか。
「アルカ、お前の能力の事が分かったぞ」
「どういう事よぉ。何が分かったってのよぉ」
「お前の透明化、それは物体に魔力を通した時に発動するようだな。オレ様の感知能力では丸見えだがな。つまり、魔力を使って物に触れる事でその触れた物を透明化する事が出来るというわけだ」
この説明を聞いたアルカが納得していた。
「そ、そうなのよぉ。アタシの能力、それは魔力を使って触れた物を透明化する能力なのよぉ」
――いや、お前……オレ様が能力の使い方を教えてやるまで自分の能力の正体知らなかっただろうが……。――
「それが使えればあのホストクラブゴージャスの中に入れるかもしれないね! ところでその透明化って触っている間は発動しているのかな?」
「多分ねぇ、だからってアタシの変なとこ触ったら怒るからねぇ!」
「大丈夫だよ、そんなことしないからさ」
まあハコザキはそんな事を出来るタイプではないヘタレだとオレ様も分かっている。
だがこの二人だけだと不安だな……。
「オイ、オレ様は今回付き合わないからな。ここでテレビを見て待っている」
「え? どうしてですか?? ボク達がもし何かあった場合どうすれば……」
「バカかお前達は、オレ様の魔法で一気に拠点移動できるのを忘れたか?」
「あ。そういえばそうでした」
まったく、先が思いやられるな……。
「とりあえずアルカの透明化スキルでお前達が目的の場所に行く、もしどうしてもヤバイ、ピンチだという時にはオレ様に魔力で話しかけてこい、そうすればすぐに拠点移動でここに戻してやる」
まあコイツらが逃げ出さない為の拠点移動魔法だが、こんな使い方も出来るわけだ。
コイツらに先に進ませて、それでもしピンチなら俺様の所に引き戻させ、その強敵をオレ様が倒して食う。
今回の依頼とやら、そのダンジョン探索の練習に良いかもしれんな。
「わかりました、ありがとうございます」
「お礼はいいから、お前らが出かけている間のオレ様のピザとポテチを頼んでおけ、コーラもついでにな!」
「わ、わかりました!」
さて、様子見と行くか。
ハコザキとアルカはオレ様のエサを用意させてから出かける事になった。
まあ、コイツらの声は離れていても聞き取る事は出来る。
オレ様の魔法に感覚共有というスキルもあるのだ。
だからオレ様は今はアルカの目と耳に感覚を共有させている。
どうやら地下の洞窟に入ったようだな。
「ハコザキ、何してるのぉ?」
「あ、アルカちゃん。とりあえず地下鉄に乗るために切符を買わないと……」
「アンタってバカァ? アタシのスキルで透明化すれば中に入れるのよぉ」
「そ、そうなんだ」
ハコザキとアルカは透明化スキルで姿を消して改札を抜けようとした。
ピンポンピンポーン!
「え?? 誰もいないのに自動改札機が閉まった!? どうなってるんだ??」
何やら黒い制服を着て帽子をかぶった男がアルカとハコザキの通ろうとした場所に駆け寄った。
はあ、前途多難だ……。