32 つよつよミミックの不穏
オレ様達はエサだったバカガキの右腕、左足、目を奪い、そのまま小部屋に置き去りにしてやった。
まあこの近くに出るモンスターはオレ様達が全部倒してドーガとやらにとってやるんだそうだ。
そうすればまたピザを手に入れる事が出来るらしい。
あのバカガキは放置しておけば誰かが連れて行くそうだ。
まあそういう風に頼まれたというなら、そうしてやるか。
とりあえずオレ様達は今日はもうこのダンジョンには用は無いらしい。
ハコザキが外に出ると言ったので、透明化の魔法の解けたアルカがオレ様を台車で押しながらダンジョンの入り口にまで戻った。
ふう、それじゃあダンジョンから外に出よう。
外に出ると、辺りは薄暗くなっていた。
オレ様とハコザキ、それにアルカはホテルの部屋に戻り、ハコザキは先程の取っていたドーガとやらをあの文字の移る鏡で見始めたようだ。
文字はこう書かれていた。
――ありがとうございます。動画、拝見致しました。アイツをわざわざ息子と同じ仕打ちで苦しめてくれたのですね。もう息子は元に戻れませんが、アイツも同じになったと知れば息子も心が浮かばれます。お金は必ず用意しますので、お待ちください。これでわたしもようやく息子に残すものを残して逝けます。お金は口座にお振込みされるよう手続きをしておきます。本当にありがとうございました――
この文章を見たハコザキの顔が変わった!
そして彼は急いで文章をあの銀色の魔法具で書き始めたようだ。
――早まらないで下さい! お金は必要ありません。その使うつもりだったお金を息子さんと生きる為に使ってください。私の方は貴女の依頼のおかげで、かなりの動画再生数を出せたのでお金を得る事が出来ました。貴方の依頼料はこの再生数で手に入るお金から受け取る事になります。――
どうやらハコザキはホッとしたようだ。
その後彼は何かを調べていたようだ。
――山下大樹 ダンジョン――
どうやらさっきの転がったエサがどうなったか調べたようだったが、その結果を見た彼は驚いていた。
「な、何だこれは!? アイツ、あの場所から病院に運ばれてその後行方不明だって……!?」
どうも詳しくは分からないが、あの転がったエサのバカガキ、アイツがどこかに連れて行かれて行方不明だそうだ。
勿体ない事をしたかな? それなら全部食べてしまえばよかったかもしれんが……。
「これは!? ラビリントスの女王パンドラの仕業? まさか、あんな都市伝説みたいな連中居るわけないのに……」
どうやらハコザキは何かを掴んだようだ。
しかし、ラビリントスだのパンドラだのって何だ?
「オイ、ハコザキ。ラビリントスだのパンドラだのって何だ?」
「あ、ミミック様。ボクも詳しくは分からないんですが、ラビリントスはダンジョン探索に存在する謎の組織の名前みたいなんです。もし本当に山下がコイツらに攫われてたとしたら、アイツもう生きていないかもしれませんね……」
もう生きていない? 勿体ない事をしたな。
「もう生きていないって、誰かに食べられたって事か?」
「いえ、恐らく……もし本当にラビリントスという組織が存在するとすれば、まだ生きたままだった山下はそのまま病院に担ぎ込まれ、身体をバラバラにされて臓器移植のパーツとされてしまったのかもしれませんね……」
「ゾウキイショク? 何だソレは??」
また謎の言葉が出てきた。
だがハコザキはそれに対してすぐに返答してきた。
「臓器移植は、身体が健康なまま死んだ人間の内臓を別の人間に移植する技術です。これを使えば病気になった人間の臓器を入れ替えれば身体が健康な状態に戻す事が出来るんです」
「何よそれぇ? 人間ってワケわからないわねぇ。そんなの魔法ですぐ治せるのにぃ」
アルカがハコザキの言っていた話に何か納得できなかったようだ。