30 つよつよミミックの不快感
どうやらハコザキの連れて来たヤツ、コイツが今回のエサらしい。
だがどうやらハコザキはコイツを殺さずに痛めつけてくれと言っている。
まあそれくらい簡単な事だが、手足を一つずつ奪い、それで目を一つというのはどういう事だ?
ピザの為ならそれくらい容易くやってやるけどさ……。
「あ、そうそう。貧乏人が分不相応な事をしてお仕置きされた笑い話をしてやろうか」
「笑い話……ですか?」
「ああ、傑作だったぜ。身分もわきまえない奴が最底辺以下になる話だ。テメエも社会勉強だと思って聞いておけよ、決して高望みしてはいけないって逸話だからよ」
このガキの声、マジで腹が立ってくるな。
何が気に入らないのかは分からないが、聞くだけで不愉快だというのはいえている。
「あのよお、オレは貧乏人は夢を見る事すら取り上げるべきだと思うんだよな。そいつが分不相応に実力を身に着けやがるとせっかくの用意された金持ち様の席が一つ奪われてしまうからな。実際オレが入学するはずの高校の推薦枠に生意気にも入ろうとしてくる貧乏人がいやがった。オレはそれがどうしても許せなくてな、クラスの担任に小金を与えていじめるように仕向けてやったのよ。それでもそいつは生意気に折れようとしなかった。だからダンジョン実習の時にわざとそいつをモンスターの巣に置き去りにしてやったんだよ」
「それって、結果どうなったんですか?」
「分不相応な貧乏人には天罰が下ったよ。モンスターに嬲り者にされてそいつは右腕と左足、それに片目が潰されてしまい、本来なら死ぬとこだったのに偽善者の配信者が助けやがった。まあもうソイツは人生リタイヤしてしまい、推薦枠どころか生きるのも辛い状態になったけどな、貧乏人のくせにわきまえず分不相応の夢を見た天罰だ! 貧乏人は成り上がろうとせず、社会の底辺でゴミ掃除でもやってろ」
なるほど、この不快な奴を痛めつけてくれという意味は分かった。
だから殺さずに右手と左足、それに目を潰してくれという事だったのか。
まあいいだろう、オレ様もこいつの声を聞くのが不快だ、サービスで声も奪ってやろう。
「よおザコ、面白い話だっただろ。貧乏人が苦しむ話はやっぱり面白いよな、なあ、そう思うだろ、思うよな??」
「さ、さあ……ボクやられる側だったから、やる側の気持ちなんて分からないんだ」
「わかるわけないだろうが、テメエは一生底辺のザコなんだよ。これは生まれながらにトップにいる人間だけの特権だからな!」
ハコザキとエサがオレ様のすぐ近くまで来た。
どうやらハコザキはまた姿を隠そうとしているみたいだな。
この部屋、造りが狭くて入り口が一つだけだからハコザキが入り口を閉じ込めたら外には出られないな。
「よお、そこに宝箱があるよな。テメエそれを開けよ」
「ご、ゴメン。ちょっとトイレ行ってきていいかな?」
「はァ? テメエ舐めてんのか? そんなもんそこらへんで済ませろよ。これだからド底辺は……」
どうやらハコザキは上手く姿を隠せたらしい。
そしてエサはオレ様の居る部屋に入って来て宝箱であるオレ様を見つけたようだ。
「お、ラッキー。宝箱じゃねえかよ。こんなとこにあるとは。そうだ、今のうちにあのザコがいない間に中身を全部ひとり占めしてやろう」
エサがオレ様の蓋を開けた。
もうイミテイトの魔法を使う必要は無いな、それよりも沈黙の魔法をコイツに使ってやろう。
――沈黙!――
コレでコイツはもう話す事は出来ない。
この魔法は上位魔法なので、時間が経って切れるものでは無く、術者であるオレ様が解除しない限り永久に効果が続くのだ。
さあ、それじゃあお仕置きの時間だ。
バグンッ!
オレ様は手を出してきたエサの右手を噛み千切った。
「……!!!!??? ……!!」
右腕を噛み千切られたエサは声も出せずにその場に転がった。
そこに変な仮面をかぶったハコザキが現れ、また変な魔法具越しにオレ様とエサを覗いていた。