29 つよつよミミックの退屈
とりあえずハコザキがオレ様達にダンジョンで待つように言っている。
アルカは透明化の魔法を使い、オレ様は空っぽの箱に見せかける為にイミテイトの魔法を使い待機中だ。
ハコザキはオレ様の事を考えているのか、大量のカシパンとスナックガシ、それにオニギリというものをコンビニという店で大量に手に入れてきたようだ。
うーむ、やはりオレ様はピザが一番美味いと思うが、このカシパンとスナックガシ、オニギリにベントーってのも悪くはない……。
どうやらオレ様が我慢できずに人間を食うのを我慢させる為にハコザキが用意してくれたようだ。
アルカも透明化する前にこれを食べていたが、彼女はスナックガシ、とくにポップコーンとポテチチッブとかいうのが気に入ったらしい。
とくにコンソメとノリシオってのが良かったようだ。
このコンビニで手に入れたという食い物を食ったおかげでオレ様は無理して人間を食おうという気にならずに済んだ。
この状態なら人間にオレ様の中を開けられてもイミテイトの魔法でただの空箱に見せるのも問題はなさそうだ。
「チェッ、ただの空箱かよっ」
「そりゃそうだろよ、こんな浅い階にある宝箱なんてもう既に誰かが手に入れているって」
「まあそれもそうだよな、誰かこの回でミミックが出るなんて言ってるやつがいるみたいだけど、そんなの気のせいだよな」
いや、そのミミックがオレ様なんだがな……。
まあいい、ハコザキがピザを食べたいならいう事を聞いてほしいと言ってるので、無理な事はしない。
アイツが戻ってくるまではイミテイトの魔法でオレ様はただの箱のフリをしておこう。
アルカは相変わらず姿を透明化させたまま魔法具で遊んでいるようだ。
どうやらレプラコーンのアルカの特殊スキルは、彼女の体に触れた物全部に適応される透明化スキルのようだ。
だからハコザキがあるかに渡したというゲームキという魔法具は彼女が触れている限りは透明化したままなのだ。
残念ながら手や身体から離れるとその物体への透明化スキルは無効化されるようだが……。
オレ様はあまりの退屈さに寝てしまっていた。
まあ寝ていてもイミテイトの魔法は効果が続いていたので、オレ様のイビキは聞こえたようだが箱の中身は空っぽという妙な都市伝説が生まれたとか何とか……。
オレ様が目を覚ますと、遠くの方から声が聞こえてきた。
「ケッ、使えない奴め。いいか、オレはお前なんかと違い、もう人生勝ち組確定コースなんだよ。名門高校の推薦枠に先公が推薦してくれてるからな。生意気にもオレの枠を捕ろうとしていたヤツは分相応の負け組人生が確定したっけ。まあ死ななかっただけマシだけどな……ハハハハ!」
どうやらハコザキが連れてきたエサってのがアイツなのか。
オレ様はハコザキに魔力で話しかけた。
『オイ、食っていいエサってコイツか?』
『ああ、だけどコイツは腕と足を一本ずつ食って目を片方潰してくれ、殺さずに苦しめて欲しいんだ』
『まあ、それくらいの手加減は余裕だが……何でだ? こんな弱そうな雑魚、食ってしまえば終わるんじゃないのか?』
『いや、コイツは手加減する事で生き地獄を味わせてやる事に意味がある』
まあいいだろう……ここで下手にハコザキのいう事を聞かなければピザが食えなくなる。
「オイ、ザコ! 聞いているのかよ、このド底辺負け組がっ。オレみたいな超勝ち組の手伝いができるだけありがたいと思え。一応最低賃金くらいは払ってやるからよ。どうせテメエも生活保護取れずに底辺仕事をしたまま死ぬだけの人生負け組なんだよ。オレとは住む世界が違うんだ。オレは今後一流高校から一流の海外大学に行って死ぬまで安定の勝ち組人生を送るんだよ」
「流石です、山下様。ボクにはとてもそんな世界想像も出来ませんよ……」
何を言っているかはわからんが、コイツの声は聴いているとムカついてくるな……。
まあいい、ハコザキがオレ様の方にエサを連れて来たようだ。