28 つよつよミミックの偽装
「ボク、依頼者と連絡を取ってみます」
――はじめまして、ジャスティス様。実はお恥ずかしい話なのですが、息子の仇をとって頂けませんでしょうか? わたしと息子は親一人子一人で交通事故で夫が亡くなった後二人で細々と生活してきました。そんな中で息子は不満も言わず、わたしの手伝いをしてくれる良い子だったのです。ですが、優秀だった息子を妬んだ金持ちの子供に目を付けられ、高校の入試の時点で推薦枠の辞退を押し付けられ、そこから教師も組んだいじめが始まったのです……。――
ハコザキが鏡のような板を見ながら睨みつけるような目になっていた。
そしてハコザキはその文章の続きを読みだした。
――息子は教師に連れられて行ったダンジョン実習でいじめっ子達に嵌められ、一人だけ置いて行かれてしまいました。そして息子はモンスターの群れに全身を切られ、かじられ……親切な人が助けてくれなければ命すらありませんでした。息子はもうダンジョンに入るどころか、日常生活すらまともに送る事が出来ません。お願いです! いじめっ子のリーダーと息子を見殺しにした教師に鉄槌を下してください!――
「許せない……この依頼、受けてやる!」
ハコザキがかなり怒っているようだ。
正直、コイツの怒る理由が分からない。
なんで全く関係のないヤツの事でこれだけ怒る事が出来るんだ? 人間はワケわからないな。
ハコザキが書いている文章はこんなものだった。
――ご連絡ありがとうございます。非常に酷い内容に心を痛めております。復讐相手は教師といじめっ子のリーダーで良いのでしょうか? 方法はお伝え出来ませんがお望みの形で復讐を代行致します。対象のこの世からの退場となるとお値段が少し張りますが、それでもよろしいでしょうか?――
文章は読めるが意味はよくわからん、まあこれもピザを食べる為に必要な事とだけ割り切っておこう。
それから少しして再びハコザキに連絡が届いたようだ。
――もうしわけありません、今は息子の社会復帰が絶望的になってしまい、また治療費がかさみ貯金も無く生活保護でどうにかやりくりをしています。とてもですが大金となると用意出来ません、ですがお渡しできる物でしたらわたしの内臓を売ってもお金は用意します。どうか、息子の仇を取ってください……お願い致します。――
ハコザキが困った顔をしている。
どうも思ったように話が進んでいないようだ。
――わかりました、それでは今回は特別に無料で引き受けましょう。その代わり殺害は出来ないのでこちらの判断で動かさせていただきます。復讐対象の情報をお送りください。――
オイオイ、いつになったら出かけるんだ?
そろそろオレ様もここにいるのに飽きてきたぞ。
アルカは相変わらず魔法具で何かをやって遊んでいる。
「やれー、殺せー、そこだぁー!!」
一体コイツはなにをやっているのやら……。
しばらくして、ハコザキが出かける準備を始めた。
「ミミック様、出かけますよ。ダンジョンで先に待っていてください」
「お、オイ、どういう事だ? 説明しろ」
ハコザキは荷物を詰め込み、アルカに台車に乗せたオレ様を押させてホテルを後にした。
「えっと、コイツだな……新人Dプレイヤー登録しているみたいだな、名前は……山下大樹か、ハンドルネームはダイキング、よし、パーティーメンバー募集してるな、それなら話は早い!」
オレ様はアルカに運ばれ、ダンジョンの入り口から中に入り、適当な部屋で待つようにハコザキに頼まれた。
どうやらこの部屋にエサを連れて来るらしい。
それまではオレ様にイミテイトの魔法で空っぽの箱のフリをしておいてくれと言われた。
まあ良いだろう、ピザの為ならアイツのいう事を聞いておいてやろう。
オレ様は空箱のフリをし、アルカは透明化の魔法で姿を消してハコザキが戻ってくるのを待つ事にした。