26 つよつよミミックの初ホテル
うむ、やはり美味い。
コレが食えるだけでもハコザキを下僕にした甲斐があったというもんだ。
オレ様はピザを一気に下で絡め取り、いくつかの味を楽しんだ。
サラミというのも悪くないがこのチーズが山盛りのやつもなかなかいける。
まあ頼んでくれたワケだからハコザキとアルカにも当然分けてやろうと思うのだが、やはりアイツらは一枚でいいらしい。
オレ様が大量に食うから遠慮しているのかとと思うんだが、どうやら人間や妖精にはこれ一枚食べるだけで腹が一杯になってしまうそうだ……。
そんなに食べられない身体でよく動けるものだと感心する。
まあオレ様にとって食べる事が生きる事の意味、それ以外は何のための時間なのかと考えるくらいだ。
食べた後には眠る、その時間は大事だが……。
「ミミック様、満足していただけましたか?」
「ああ、これだけ食べたならな、さて……それではまたダンジョンに向かうのか?」
「いえ、今日はもう一旦休もうかと思います」
そうか、それではここで休むのだな。
下僕の安全くらいは確保してやろう、仕方ないな、寝るのはまた今度だ。
オレ様が寝てしまえばコイツら程度の弱さだと、あっという間に別の奴らに殺られてしまう。
「では一度ダンジョンを出ましょう」
――え? 今からまたダンジョンに向かうのではなかったのか??――
ハコザキとアルカはオレ様を台車で押しながらダンジョンの外に出た。
どうやら外はすっかり暗くなっているようだ。
「ハコザキ、どうするんだ? 今からお前の家にまたあのタクシーとやらで行くのか?」
「いいえ、今日はホテルに泊まります」
「えぇっ!? ハコザキィッ……アタシィ、アンタと同じ部屋なんてイヤよォ!!」
「わかってるよ、きちんと仕切りのある部屋だって……」
どうやらハコザキはこの近くにあるというホテルに泊まるらしい。
「そこでならパソコン作業も出来そうですから、今までだと満喫くらいしか泊まれませんでした。また、事務所に雑魚寝させられてまた朝合流させられた事もあります。大高の奴は女を連れ込んでスイートに泊まっておきながら……ボクに事務所から朝合流しろと言ったりされました」
どうやらオオタカというのはハコザキがこき使われていた人間の名前のようだ。
多分オレ様がハコザキと初めて会った時に食ったヤツがそのオオタカという事みたいだな。
オレ様達はその日の夜、都内の一流ホテルの部屋に泊まった。
「ハコザキ様ですね、こちらにサインをどうぞ」
「はい、チェックアウトは二週間後で良いですか? 荷物をしばらく置く感じになるかと……」
「はい、ハコザキ様は許可証が確認できたのでDプレイヤー割引が適応されます。ただし二週間経ってお戻りにならない場合は死亡、リタイヤと見なし……部屋の私物はこちらで処分させていただく事になりますがよろしいでしょうか?」
ハコザキが何かを話しているようだ。
何を話しているかはよくわからんが、まあどうやらこのホテルという場所にいるなら家に戻らなくても良いようだな。
さて、それではオレ様は部屋についたらひと眠りするとするか……。
ハコザキが部屋のカギを受け取ったので、オレ様はアルカに台車で押されて部屋まで連れて行ってもらう事になった。
どうやらハコザキとアルカは別々の部屋にしようとしたみたいだが、部屋に空きが無かったのでツインという部屋になったらしい。
アルカは文句を言いつつもそれを受け入れたようだ。
まあいい、コイツらがケンカするのはもう慣れた。
それよりもオレ様はピザを食い過ぎて眠くなってきた。
早く部屋についたら休ませろ……。
ハコザキは部屋の入り口を魔法のカードで開いた。
どうやらあのカードが鍵の代わりになるらしい。
便利な道具もあるもんだな。
そして、部屋についたハコザキはまたあの銀色の魔法生物を壁の鼻の穴に尻尾を差し込んだようだ。
あの壁の鼻の穴、どこにでもあるんだな……。