2 つよつよミミックの引っ越し(アルカ視点)
「えぇ、ここどこなのよぉ……」
アタシはつい声を出してしまった。
「ガルル……? ガル……」
危なかったぁ……こんなとこで声を出したらアタシもうおしまいだぁ。
アタシはアルカ。
緑の帽子がトレードマークの可愛らしい妖精の女の子。
妖精の住む小さな村にいたんだけど、アタシは宝石が好きなのぉ。
でも、アタシの村には宝石なんて無くて、食べるだけでやっと……。
お父さんはニンゲンの世界に行った事があるみたいだけど、もう二度とニンゲンには会いたくないと言ったまま亡くなってしまったのぉ。
お父さんから譲ってもらったのはこの緑色のシルクハット。
コレがアタシの宝物。
どうやらこの帽子、お父さんの魔力が宿ってるみたいで、アタシがまだ使えないはずのレプラコーン族の得意魔法、透明化を使えるようになるのぉ。
この魔法が使えたら強ーいモンスターの居る場所でも入る事が出来るのぉ。
やっぱり冒険するには少し危険でもダンジョンの奥に行かないとぉ、アタシのスキルは透明化だから強いモンスターが相手でも見つからなきゃ先に進めるのよぉ。
まあそれでもルームガーダーやフロアボスっていうのがいるダンジョンはアタシみたいな可愛いだけの妖精にはとてもいけないからぁ、そういうのがいないダンジョンに行かないとぉ。
そういえばぁ、ここから少し離れた場所にずーッと昔に魔王が住んでいたって城があったわよねぇ。
そこならまだアタシの好きな宝石が残ってるかもしれない。
「ねえ、お母さん。アタシちょっと出かけて来るわぁ」
「アルカっ、どこに行くの!?」
ごめんなさい、お母さん。宝石持って帰ってきたらお母さんにもプレゼントしてあげるからねぇ。
アタシはMP回復の出来るお弁当を数日分持って魔王城の廃墟って場所に行ったのぉ。
「ここが魔王城……元ラストダンジョンって言われた場所なのねぇ。待っててよぉ、アタシの宝石ちゃん」
アタシは早速透明化のスキルで身体を隠し、そのままダンジョンの中に入ったのぉ。
そこにはたくさーんの怖ーいモンスターがウヨウヨシテいたわぁ。
でもぉ、姿を隠したアタシはそいつ等に見つかる事も無くダンジョンの奥の奥まで進んだのよぉ。
……でも、全然宝石どころかアクセサリーの一つも見つからないってどういう事よぉ!
アタシはイライラしながらダンジョンの奥の方に向かったわぁ。
魔王城の奥は誰もいなくて、モンスターもほとんどいなかった。
残っていたのは巨大なゴーレムとかガーゴイルくらいでぇ、普通のモンスターは何もいなかったのぉ。
まあここが使われなくなって数百年とかいうから、多分ご飯食べられないモンスターはここを離れたんでしょ。
今ここにいるのは、ここから動けない理由のあるゴーレムとかガーゴイルみたいな魔法生物くらいなんでしょうねぇ。
そういえばお腹が空いたなぁ。
アタシは持ってきたお弁当を食べ、MPを回復させた。
さてと、帰りの分を残しておかないと、MPが無くなっちゃったったらこのダンジョンから帰る事も出来なくなっちゃう……。
でも、全然なーんにも見つからない。
何でなのよぉ! ここには何か宝石の一つくらい残ってないのぉ?
頭に来たアタシは魔王ってのが座ってたって椅子を思いっきり蹴っ飛ばしたのぉ。
すると、椅子が動き、地下室の階段が出てきたのぉ。
ここは隠し部屋への通路なのねぇ。
隠し部屋の通路はあちこちが崩れて奥まで進めなくなっていた。
でもアタシは身体が人間の子供くらいのサイズだから少しの隙間があれば中に入れるのよぉ。
それでアタシはこの魔王城の一番奥の奥に到着した。
あー疲れたぁ、もうお腹がペコペコぉ。
疲れたしもう真っ暗だし、アタシは泣きたくなってきた。
それに宝石はここまで一つも見つからない……。
それでもあきらめきれないアタシは一番奥の宝箱をついに見つけたのぉ。
――でもそれがアタシとご主人様との出会いだったわけぇ――