23 つよつよミミックの階層移動
フロアボスであるオークリーダーを倒した事で、オレ様達は下の階層へのカギを手に入れた。
このフロアボス、一定時間で再び復活するので、誰かが倒したらそのタイミングに合わせて階段を降りないと再びフロアボスが復活する仕組みになっている。
一方、帰り道は一方通行のドアがあちこちにあるらしく、帰る事自体は難しくないようだ。
だがこの帰りのドアは一方通行の為、反対側に開く事が出来ない。
だから地下に潜るやつらはどこまでも潜れるが危険になったらすぐに引き返せるようにしているらしい。
どうも話を聞くとこれはオレ達の世界の神がダンジョンに冒険者、討伐者を食べさせない為らしい。
オレ様は知らなかったが、どうやらこのダンジョン、人間や討伐者に属する者以外はダンジョンの所有物というよくわからないルールに縛られているらしい。
つまり、ここでオレ様がモンスターや人間を捕食すると、ダンジョン自体のレベルアップにつながるそうだ……。
――この世界のルールの意味が分からん!――
まあオレ様は敵がいれば倒して食べるだけだ。
それ以上になにを考える事があるというのだ?
オレ様はアルカに抱えてもらい、一階層下のフロアに降りてきた。
この階層も大抵の冒険者だの配信者だのが入っているそうで、ハコザキは他の人間達と挨拶をした。
大抵の連中は挨拶を返してきたが、まるで相手にもしないヤツらがいた。
「こんにちは」
「ヘッ。何だこのザコ丸出しのヤツは? 後ろにいるガキも弱そうだし」
「お、でもよく見ると可愛いじゃん、どうだ? こんな弱そうなヤツさっさと見捨てておれたちと行こうぜ!」
「!! アイツらっ!!」
帽子をかぶって顔を隠していたアルカが怒りを表情に出している。
「おいおい。お嬢ちゃん、無視は良くないなー。人と話すときは顔を見て話せって教えてもらわなかったのか?」
男達のリーダーがアルカの帽子を取り上げた。
すると、帽子に隠していたアルカの尖った耳が髪から見えてしまったようだ。
「オ、オイ、見ろよ。アイツ人間じゃねえぞ!」
「なんだなんだ、こんな弱そうなヤツがモンスター捕まえて連れてたってわけか。それなら許せないなぁ、弱いヤツが好きにするのはこの世のルールに反してるからな。これはキッチリと没収しておれたちの所有物にしないとな!!」
「アルカに手を出すなっ!」
どうやらハコザキがアルカを守ろうとしている。
「ヘン、テメェみたいなザコがおれたちに逆らうつもりか? 一度痛い目を見ないと気が済まないようだな!」
男は太い腕でハコザキを殴りつけた。
殴られたハコザキは反撃もできず吹っ飛んだ。
アイツマジで弱いな……。
「ザコが、弱いくせにおれたちに歯向かうからだ! おれたちは泣く子も黙る新進気鋭のDプレイヤー、虞盧威座亜様だぜ!
その名前を聞いたアルカの表情が変わった。
目の前にいる連中が自分の家族の仇だとわかったからだ。
「アンタ達がお父さん、お母さんをぉ……許せないっ!」
「お、コイツあの村の生き残りかよ。そういえば姉ちゃん姉ちゃんと言ってたクソガキいたよな。アイツどうしたっけ?」
「クティに何をしたのよぉ! アタシ達何かアンタ達に悪い事したのぉ……?」
男達が笑っている。
「別に、単に暇つぶしと配信のネタ探し。こういうのって受けるんだよな、特に泣き叫ぶ奴をいじめると更に泣き叫ぶからエスカレートするんだわ」
気に入らん。
コイツらの行動、心理、声、全てが不快だ。
それにオレ様の下僕であるアルカやハコザキを好きにしていいのはオレ様だけだ。
「お、コイツら生意気に宝箱持ってやがるぜ」
「そいつは生意気だな、分不相応な持ち物は没収してやらないと」
そう言ってコイツらはオレ様に手を伸ばしてきた。
バグッ!!
「ヘッ? な、何だよ……おれの手が??」
「こ、コイツ、ミミックだ!! 何でこんなとこにミミックがあるんだよぉ!?」
さて、食事の時間だ……。