22 つよつよミミックのボス戦
「凄い良い映像が取れました! ありがとうございます」
ハコザキがオレ様に感謝している。
こんな経験は初めてだな。
オレ様は相手に恐れられる事はいつもの事だったが、相手に褒められたのは初めてだ。
まあ褒められた事が無いと言えば語弊があるが、それはソードマスターと戦い、勝って最後に相手がオレ様を讃えたので、感謝されたことが無いと言った方が正しいか……。
だが今はアルカやハコザキを助けてやると、アイツらはオレ様に感謝する。
何だかむず痒いような感覚もあるが、これも悪くはない。
オレ様はその後もハコザキに頼まれたように具現化させた剣でコボルト、スライム、レッサーウルフといったモンスターを次々と細切れにしてやった。
それをハコザキはやはり変な道具を通して覗き込んでいるようだ。
あの道具はあのハコザキの家で見たオレ様の食事シーンを再現する魔法道具なのか。
だがいくら再現しても同じ物を食べる事が出来るわけでは無いだろうに。
人間という者は不思議な物だ。
「ご主人様ぁ。凄いですぅ!!」
アルカがオレ様を褒めている。
まあ当然だろう、お前達ならあのモンスターに勝てるわけが無いだろうからな。
そうしてオレ様達はダンジョンの階段にまで到着した。
そこに現れたのはオークリーダー、どうやらこのダンジョンの一階のフロアボスらしい。
「グガッガギャアウオオオオオオオオロロロロオーン」
オイ、何を叫んでいるかオレ様ですらわからんぞ。
まあコイツにオレ様達を歓迎する気が無いのは確かだな。
オークリーダーは巨大なこん棒を振るい、オレ様に向かって殴りつけてきた。
「ああっ、ミミック様ー!!」
ガギィイイン!
オレ様の体に衝撃が走る。
だが、所詮その程度だ、以前の餓死寸前のオレ様ならこれでバラバラに砕かれていたかもしれないが、食事をした事で全盛期の四分の一程度の力を取り戻したオレ様ならこの程度のモンスター、何という事は無い!
「フン、オレ様がこのような相手に負けるとでも思っているのか? そこで黙って見ていろ」
オレ様は具現化したハンマーを舌で絡め取り、オークリーダーに向かい合った。
「さて、このお礼はしっかりとさせてもらおうか!!」
「グロロロロ、グロロロロロ、グロロロロロォーッ!!」
オークリーダーが叫んでいる。
そしてヤツはオレ様に再びこん棒を叩きつけてきた。
――目には目を歯には歯を――これがオレ様のモットーだ。
相手が殴りつけて来たなら、こちらはそれを倍以上の力で殴り返すだけだ。
ベギィッ!
「グロっ!???」
オークリーダーの持つこん棒がへし折られた。
どうやらアレは木で出来ていたらしい。
それに対してオレ様の持つ具現化したハンマーは鋼鉄製だ。
さて、一気に叩き潰してやろうか!
ベギッ! ベゴッ ズガッ!!
オレ様がハンマーを叩きつける鈍い音が辺りに響き渡る。
こん棒を失ったオークリーダーはオレ様の鋼鉄製ハンマーで両腕を粉砕され、必死で逃げようとした。
「逃さん、キサマはオレ様のエサだ!」
「グラララロォーン……」
先程とは打って変わって弱気になったオークリーダーの足を狙い、オレ様は鋼鉄製のハンマーをぶん投げ、足を砕いた。
「グゴォッ!?」
ドサッ……。
足を砕かれ、横たわったオークリーダーはもう既にオレ様のエサでしかなかった。
「さて、一気に食べやすいように叩き潰してやろう!」
「グモォオオーン!!」
ガギッ、ブチャッ、グチャッ……グジャッ!!
オレ様が何度も何度もハンマーを叩きつけると、オークリーダーだったものはどんどん砕かれた肉塊でしかなくなっていった。
さて、これくらいまで砕けば噛み砕く事も無く食べやすくなっただろう。
オレ様は舌を伸ばし、オークリーダーだった肉片を舌で舐め取り、一気に口に流し込んだ。
うむ、美味い。やはり自分で倒した相手を食うのは一味違ったもんだ。
難を言うなら、ちょっと砕きすぎて噛み応えが無かったのが失敗だったかもしれない。
……こうしてフロアボスだったオークリーダーはオレ様の胃袋の中に納まる事になった。