20 つよつよミミックの寛容
オレ様達はハコザキの家を出た。
またあのデンシャとかいう動く細長い箱に入って移動するのか。
オレ様はそう思っていたのだが、ハコザキは家の前に立ったままあの魔法の道具で誰かと話をしているようだ。
「……ハイツの入り口のところでお願いします。時間は……15分で到着するんですね、わかりました。名前は、箱崎でお願いします」
コイツ、一体誰と話をしているんだ?
まあどうやらここで待っていれば何かが来るらしい。
「よし、タクシー捕まったから、コレでダンジョン入り口まで行けるぞ!」
「ハコザキ、アタシもうあのデンシャってのイヤッ! 人間多すぎるし狭いし押されるし、アタシの胸やお尻触るヤツいたのよぉ!!」
「えっ!? こんなチンチクリンの子供にしか見えないのに手を出したヤツいるのっ? 余程のツワモノだな、ソイツ」
「ハコザキッ!! アンタ今アタシの事バカにしたでしょっ!!」
またケンカしてるのか、コイツらは……懲りないヤツらだな。
「煩い、大人しくしないと二人とも食ってしまうぞ!」
「「スミマセン」」
このやりとり何度目だ?
オレ様達はハコザキの呼んだタクシーとかいうもので移動する事になった。
「ハコザキ、来る時はデンシャだったのに今はなぜデンシャでは無いのだ?」
「ミミック様、あの時はお金がカツカツだったので移動のお金を節約していたんです。今はお金に余裕があるのでタクシーを使ってダンジョンに向かうわけです」
うーむ。何を言いたいのかまるでわからん。
まあカネというものが無かったらデンシャ、カネがあったらこのタクシーというものになるらしい。
「ハコザキ様ですね、どうぞお乗りください」
「スミマセン、あの……トランクに大型の荷物を乗せたいのですが」
オレ様を荷物扱いとは、まあ許してやろう。
今のオレ様にとってハコザキとアルカは必要な存在だ。
下手にくだらない事で怒っていたらエサにありつけなくなる。
オレ様は丁寧に持ち運ばれ、トランクとやらに積み込まれた。
まあ、少し暗くて狭いがあの揺れるデンシャとやらよりはよほどマシだ。
オレ様はトランクに、ハコザキとアルカは前の座席に座り、オレ様達はタクシーで移動した。
デンシャよりも少し時間がかかったようだがオレ様達は元いたダンジョンに戻ってきた。
「このダンジョンミミック出るってよ」
「マジかよ、オレ勝ち目ないぜ、やっぱここやめて別のダンジョンにしようぜ」
「ばかやろー! ミミックが怖くてDプレイヤーやってられっかよ!!」
身の程知らずの連中だ、オレ様に勝てるつもりでいるらしい。
「ミミック様……ここは穏便にお願いします、ここで下手に暴れたら今後エサの調達が出来なくなりますから……」
それは困る、ここで下手に暴れるともうエサが手に入らなくなるとコイツらと一緒にいる意味がなくなってしまう。
「アンタら、弱そうだな。新人Dプレイヤーか?」
「ハイ、そうです。よろしくお願いします」
「フンッ!」
アルカよ、もう少し愛想良くしろよ。
いくら人間が嫌いといっても少しくらいは芝居しろ。
「スミマセン……コイツ、オレの弟なんです。Dプレイヤーに興味あるそうでオレについて来たんです」
「誰が弟よぉ!!」
「ハハハ、お兄ちゃん……弟くんを大事にしてやれよ、死ぬなよ。命あっての物種だからな」
どうやらこの人間達はオレ達に敵意は無いらしい。
そしてここから離れ、別のダンジョンに向かったようだ。
「さて、それじゃあダンジョンの中に入ろう」
「…………バカァ」
オレ様はアルカに台車に載せられ、ハコザキは動画を抱えてダンジョンの中に入った。
どうでもいいがオレ様の上に色々荷物を載せるのは勘弁してくれ。
まあもうアイツらはオレ様の仲間なのでちょっとくらいの無礼は許してやる。
怒ってエサが食えなくなるくらいならコレくらいなんて事は無い。