19 つよつよミミックの出発
ハコザキはシャワーを浴びてきたらしい。
まあいつ見ても貧弱な身体だ、こんなの食っても絶対に美味いわけがない。
「キャアッ、ハコザキ、アンタなんてカッコしてんのよぉ!!」
アルカが叫んだ。
まあいきなり裸の男が目の前に現れたらそりゃあビックリするな。
「アルカ、誤解だって、誤解。キミもお風呂入ってきたら? シャワーもあるよ」
「えっ!? 水浴びできるのここぉ!? まあいいわ、それじゃ使われてもらうわよぉ。覗いたら……コロスッ!!」
アルカはハコザキの家でシャワーとやらを使って水浴びをしているようだ。
まあ俺様にはどうでもいい話だ、
オレ様は見た目が箱なので綺麗でも汚くても開かれればそれで良い。
どちらの方が開く確率が高いかまではわからないが、まあ開けられたら相手を食えば良いだけだ。
——最終的には全員殺せば良いのだ!!——
アルカの鼻歌が聞こえてくる。
どうやら水浴びができて機嫌が良いようだ。
まあハコザキもアルカも今はオレ様の下僕だ。
エサを用意するのにこの二人がいればまあ何の問題もないだろう。
さて、アルカが水浴びを終わらせたようだ。
そろそろここを出る準備をするのだろう。
その前にもう一度ハコザキにピザを注文させよう。
あれはまたしばらく食べられなそうだからな。
「オイ、ハコザキ。オレ様のためにピザを二十人分用意しろ!」
「わかりました、ミミック様」
ハコザキは魔法道具で離れたやつと話をし、俺様の為に二十枚の特大ピザを用意した。
オレ様は舌で絡め取り、一枚を残して全部平らげた。
どうやらハコザキとアルカは二人合わせてもこの一枚だけで足りるらしい。
それだとあの三枚は確かに食わせすぎだったのかもな。
水浴びを終わらせたアルカはかなり上機嫌だった。
だが、ハコザキは何かの鏡みたいなものをずっと見ている。
四角い鏡には何か大量の文字が書かれているがコレで鏡の意味があるのだろうか?
形は違うがなんとなくあの銀色の魔法生物の仲間のように見えるな。
「ハコザキ、アンタ……何でアタシの事無視するのよぉ!!」
顔を赤くしながらアルカがハコザキをポカポカ叩いている。
まるでわけわからん……覗くなと言ったり、無視するなと言ったり、その場で言う方がコロコロ変わってるな。
「無視って、こっちは今出かける準備してたとこなんだよ」
——ピンポーン——
「宅配ピザのピザマッドです、ピザ二十人前お届けに来ました。あの……イタズラや嫌がらせ電話の被害受けてませんよね??」
「あ、大丈夫です。コレからサークルのみんなと合流して車で迎えにきてもらうとこなんです」
「そうですか、それでは料金、十万三千三百八十円になります」
「現金でお願いします」
どうやらオレ様の待ち望んだピザが到着したらしい。
オレ様は舌を伸ばして一気に絡め取って十枚平らげた。
うむ、やはり美味い。
コレばかり食べ続けたらマジでコレ以外食べれなくなる味だ。
ここで食い溜めしてまた次回ここに来た時に食うとしよう。
どうやら尻尾から魔力を蓄積していた魔法生物の腹もいっぱいになったようだ。
尻尾を壁の鼻の穴から抜き出してカバンにしまわれている。
しかし世の中訳のわからない生き物もいるものだな。
鼻の穴に尻尾を差し込む事で魔力を溜め込む魔法生物か、オレの知る限りではそんな奴いなかったからな。
「アルカちゃん、準備できた?」
「フンッ、アタシの事なんてどうでも良いんでしょ! その鏡とにらめっこしてればっ!」
アルカはまだ機嫌が悪そうだな。
まあ放っておけばそのうち機嫌も治るだろう。
さて、そろそろ出かけるようだ。
その前に残ったピザ一枚残して全部平らげよう。
オレ様は満足するまでピザを平らげ、ハコザキの家を出る事にした。
アルカは台車にオレ様を載せ、再び上着で人間の子供の姿に偽装したようだ。
さて、それじゃあダンジョンに戻るぞ。